雇用情勢の悪化が止まらない。6月の完全失業率が前月より0・2ポイント悪化の5・4%となった。5カ月連続の上昇で、2003年に記録した過去最悪の5・5%突破が濃厚だ。
有効求人倍率も前月より0・01ポイント低下の0・43倍で、2カ月連続で過去最低を更新した。完全失業者数は前年同月比83万人増の348万人で、増加幅は過去最大となる。雇用者数も110万人減の5455万人で、減少幅はこれまでで最大である。厚生労働省は早期の改善は望めないとの見方を示した。
失業率悪化の原因は製造業で進む雇用削減にある。6月の全産業の雇用者数は前年同月より110万人減ったが、このうち製造業で88万人も減少した。世界同時不況の直撃で急激な輸出の減少に見舞われた企業が大幅減産に踏み切り労働者の削減を進めたからだ。
在庫調整も落ち着きを取り戻し、やっと輸出や生産に回復の兆しが出てくるようになった。しかし、雇用の改善までには半年から1年程度かかるとされ、完全失業率は来年初めごろには6%台まで悪化すると予測するエコノミストもいる。
今回の不況で、非正規労働者が派遣切りや雇い止めなど雇用の調整弁として使われた。企業も新卒採用の縮小など雇用抑制の構えを崩していない。雇用が悪化すれば消費を冷やし、景気回復を遅らせる可能性もある。慎重な対応を求めたい。
今月末の総選挙後に発足する新政権は雇用情勢の改善という課題を担う。各党が打ち出す政策が注目される。新たな雇用の受け皿となる産業の育成、非正規労働者の保護や雇用の安全網の強化などが焦点だ。国民が安心して働くことができる仕組みをどう構築するか。与野党は政策を競い合ってほしい。