自民党も民主党も衆院選のマニフェスト(政権公約)では、年金・医療の安心や雇用の安定などを掲げている。その実現には、必要な制度改革に加えて経済成長が欠かせない。増税や失業給付の拡大だけでは、財政再建や国民生活の安定は得られない。各党は衆院選では成長戦略の具体論で競うべきだ。
自民党の政権公約では「経済成長政策」という項目を設けて「2010年度後半に年率2%の経済成長を実現」「今後10年で1人当たり国民所得を世界トップクラスに」などの数値目標を掲げた。
だが、目標の実現に向けた具体策は踏み込み不足だ。研究開発の強化や技術革新の推進で、生産性を向上し、産業の高付加価値化を進めるとしているが、どうやってそれを実現するかはっきりしない。
成長戦略に必要な規制改革についても「消費者行政とのバランスをとりつつ、各種規制のあり方を見直し、発展的経済活動を側面支援する」とあるだけで、どの分野に重点を置くのかなどは示していない。
成長は大事と言いながら、そのために何をするのかよくわからない。これでは有権者は判断しにくい。
民主党の政権公約には、成長戦略の項目すらない。同党は「国民の生活が第一。」というキャッチフレーズを掲げ、子ども手当の創設など子育て支援、高速道路無料化、農家への戸別所得補償など、家計への給付などが見えやすい政策を並べた。だが、政権をとったら、日本経済の成長の道筋を全体としてどう描くのかの問いに十分には答えていない。
国と地方の借金残高が800兆円を超え、主要国では最悪水準の財政赤字をどう減らしていくかは次期政権にとっても重要課題だ。財政健全化は増税や政府の無駄減らしだけでは達成できない。経済が成長して税収が増えなければ、財政の本格的な改善にはつながらない。財政再建にも成長戦略は欠かせない。
雇用対策も、失業給付など安全網を張るだけでは不十分だ。企業が利益をあげ、新規採用を増やせるような経済成長の環境をどう整えるかという政策が重要になる。
日本経済を中長期の成長軌道に乗せるには、掛け声や一時的な財政支出による下支えだけでは難しい。民間主導の持続成長を進めるには、産業構造の転換を促す農業や医療分野の規制改革、経済活性化に視点を置いた税制改革などの政策を打ち出す必要がある。