景気に一部明るさが出てきたとはいえ、働く者にとって一番の関心は失業や賃下げなどの雇用不安がいつ、どのように解消されるかだ。各党は政権公約で具体的な道筋をはっきりと示してほしい。
六月の完全失業率は5・4%に悪化する一方、有効求人倍率は〇・四三倍と最低記録を更新。九月末までに失職する派遣やパート社員など非正規雇用労働者も二十二万九千人以上−など雇用は危機的状況だ。
失業者はさらに急増する可能性がある。今年の経済財政白書によると、企業が抱える過剰雇用(企業内失業者)はこの一〜三月期で六百七万人に達した。生産水準が早期に回復しなければ大規模な雇用調整が始まる恐れがある。
雇用不安は放置できない。失業や生活苦から自殺する人が増える恐れがある。失業率が5%を超えると、殺人など重大犯罪が増えるとの経験則も指摘されている。
低賃金は勤労意欲を損なう。白書は〇七年には年収三百万円未満が雇用者全体の半数を超えたほか、正規と非正規労働者との生涯所得は二・五倍という「格差」も指摘した。社会の安定は、雇用をしっかり確保することからだ。
今回の衆院選ではこれまでの労働・雇用政策の検証とともに、深刻な雇用情勢や低賃金に対する解決策の提示が求められている。
自民党の政権公約は中期的に2%成長を目指すことを前提に失業の防止と再就職支援、日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ。政府与党として推進している現在の雇用対策を強化した形である。
若年者雇用を取り上げたことは意味があるが、検証が必要だ。〇八年で百七十万人もいるフリーターの正規雇用化と六十四万人のニート(無業者)の自立に向け、具体的な工程も示すべきだ。
民主党の雇用政策は雇用保険の非正規労働者への適用拡大や派遣労働者対策が柱だ。派遣切り続出という不安定雇用と恒常的な低賃金。派遣対策は非正規問題の核心だけに、重点化は評価できる。
二カ月以内の派遣を禁止するほか日雇い・製造業派遣も原則禁止とする。さらに専門業務以外の派遣は常用雇用とするなど自民党よりも明快である。こうした規制強化は社民党、国民新党も掲げている。
労働者派遣法改正案は前国会で廃案となったが、規制強化の方向では与野党とも一致している。派遣労働者の保護を目指してしっかりと議論を重ねてもらいたい。
この記事を印刷する