「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」。人類初の月面着陸に成功した米国の宇宙船「アポロ11号」のアームストロング船長が残した有名な言葉だ。
あれから40年。子ども心に月面着陸に胸躍らせた若田光一さんが、日本人として初めて国際宇宙ステーションでの長期滞在に挑み、4カ月半ぶりに帰還した。信じられないほどのしっかりした足取りに驚いた。
第一声は「浦島太郎になった感じ」。無重力の生活で失われた体力を取り戻すため45日間のリハビリに入るが、「マラソンを全力で走りきった」充足感に浸っていることだろう。
得意のロボットアーム操作で日本の実験棟「きぼう」を完成させる大役を果たした。無重力の宇宙は人体には過酷な環境だ。骨が弱るのを防ぐ骨粗しょう症薬を飲むなど自ら実験台となって貴重な医学データも取った。
筋力を落とさないよう毎日課せられたのが2時間の運動。ストレス解消にもなったという。心癒やされたのは宇宙から見た地球の姿だろうか。「青く美しいオアシス。見飽きることがない」と絶賛した。
長期滞在への思いを若田さんは「夢」「探求心」「思いやり」の三つの言葉で象徴させた。今回の成果は、日本の有人宇宙開発に新たな扉を開く大きな一歩に違いない。