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地球温暖化を食い止めようと、世界は低炭素化を急いでいる。そのための基盤整備の一つとして、次世代送電網が注目されている。
太陽光や風力による発電は日照や風の強さに左右され、電気の周波数が安定しない。また、家庭の太陽光発電で余った電気が送電網に逆流して電圧が上がる恐れもある。このため、電力業界は「安定供給が脅かされる」と、大量の自然エネルギーの受け入れには及び腰だった。
自然エネルギーを拡大するには、補助金や買い取り制度といった促進政策だけでなく、送電網の進化が必要だ。でないと、太陽光発電を「2020年に20倍」「30年には40倍」にするという政府目標の達成も難しい。
そこで、経済産業省は次世代送電網づくりのための実験に乗り出す。九州と沖縄の離島10カ所にある送電網を利用し、3年ほどかけて課題を洗い出すことにしている。
政府が一歩を踏み出すことには意味がある。だが、それで自然エネルギーの飛躍的な拡大につながるとは思えない。実験では送電網に蓄電池を組み込んで、電気の質を保てるかどうかなどを確かめるが、既存の送電網の改良という印象が強い。次世代と呼べるほど画期的なものではないからだ。
自然エネルギーを飛躍的に増やすには、既存の枠にとらわれず、さまざまな可能性を探らないといけない。
例えば欧州では、各国の送電網が密接に連携し、周波数や電圧の変動を吸収しやすい構造になっている。電力会社ごとにほぼ独立している日本の送電網をもっと連携させるなどの思い切った仕組みを開発したい。
欧米はさらに踏み込んだ次世代送電網を模索している。自然エネルギーの拡大にとどまらず、省電力をも実現しようというものだ。
代表例に、オバマ米大統領がグリーン・ニューディール政策の柱にすえたスマートグリッド(賢い送電網)がある。情報技術を活用して末端の電気機器までも効率的に制御し、電力消費を抑えることを狙っている。
その時々の電気料金に応じて家電を自動的にオン・オフする、地域内で電気を融通し合って無駄なく使う、全体の需給状況に応じて電力会社が家庭やビルの空調の設定温度を遠隔操作で上げ下げする……。
新型計器のスマートメーターを家庭やオフィスに置き、電気の使用状況などを電力会社とリアルタイムでやりとりし、こうした制御を実現する。
経産省や電力業界は、「日本の送電網はすでに十分スマートだ」と開発に消極的だ。だが、次世代送電網づくりは未来への投資であり、低炭素時代のビジネスチャンスでもある。もっと柔軟に幅広い選択肢を探るべきだ。
ラグビーの世界一を決める祭典、ワールドカップ(W杯)が日本にやってくる。国際ラグビーボード(IRB)が先日の理事会で、10年後の2019年の開催国として日本を選んだ。
五輪、サッカーW杯と並ぶスポーツの大掛かりな世界大会だ。前回07年のフランス大会では42億人がテレビ観戦したといわれ、昨年の北京五輪の47億人に匹敵する。欧州と南半球の伝統国で交互に開催されてきた慣例を破り、初めてアジアで開かれる。
英国を発祥の地とするラグビーが日本に伝わって110年になる。
人気の頂点は80年代だ。新日鉄釜石の日本選手権7連覇、同志社大の史上初の大学選手権3連覇で沸いた。人気校の早大と明大の対戦は6万人を集め入場券が手に入らないほどだった。
その後はサッカーに押されて人気は下火になる。日本協会が普及の努力を一時怠ったのも影響しただろう。
日本でのW杯開催決定は、人気回復の起爆剤となるに違いない。
ラグビーには、戦った者同士が試合後に交歓する独特の文化がある。「スクラム組んで」とか「ノーサイドの精神で」などの、ラグビーを語源とする言葉は、スポーツを超えて日常的に使われている。自己犠牲と助け合い、戦う相手への敬意といった普遍的な価値ゆえのことだ。
そうした価値観を教育にも生かそうとしてのことだろう、文部科学省は昨年、「タグラグビー」という、タックルの代わりに腰に付けたひもを取る簡易ラグビーを学習指導要領の体育種目に加えた。今年で5回目の全国小学生選手権大会の予選には987チーム、9700人余りが出場した。少子化の中でも参加者は年々増えている。
ところが、国内トップにある日本代表チームの成績が芳しくない。W杯には毎回参加するものの、第2回のジンバブエ戦で1勝を挙げただけだ。
次回のW杯は、11年にニュージーランドで開かれる。ここでいい結果を残しておきたい。
日本大会までのこれからの10年間にいかに底辺を広げ、そのころ主力となる現在の中高生の力をどう伸ばしていくかが問われる。それは日本のラグビー界全体の底上げにもつながる。
またW杯の開催には、日本は百数十億円の拠出をIRBから義務づけられる。経済の先行きが不透明な中でどう賄うのか。夢の舞台への、解決すべき課題は少なくない。
今回、日本の誘致への名乗りあげはIRBの戦略とも合致した。IRBは五輪にラグビーを復活させ、市場を広げたいと狙っている。そういう中での「日本開催」は、IRBが普及に努力しているとのアピールになる。
背景は様々だが、日本W杯が一層の国際化につながることを願う。