厚生労働省は、介護保険制度でケアの必要度を判断する「要介護認定」の基準を見直すことを決めた。10月1日の申請分から実施する方針だ。4月に新基準が導入されてわずか半年での修正である。
要介護認定は、自治体が派遣した調査員が申請者の心身の状態や生活能力をチェックし、コンピューターで1次判定。さらに、主治医の意見書を合わせ専門家らの認定審査会が最終的に判定する。
4月に導入された新基準では調査項目を82から74に減らし、調査票への記入方法も変更された。例えば介護が必要なのに行われていない場合、これまでは調査員が判断し記入していたが、新基準では「介助されていない」を選んで特記事項に「介護不足」などと記入する。調査員の主観などによる認定結果のばらつきを防止するのが狙いと厚労省は説明していた。
ただ、新基準をめぐっては介護関係団体などから「今より要介護度が軽く判定されるのでは」と不安の声が上がっていたのも事実だ。厚労省が4?5月時点の新基準の影響を調査した結果、介護サービスを受ける必要がない「非該当」(自立)と判定された新たな申請者が5・0%と、前年同時期(2・4%)より倍増したことも分かった。
厚労省が新基準の修正に踏み切ったのは、こうした批判や現状に対応して、高齢者の要介護度が実際より軽く判定されないようにする必要があると判断したためだ。
市町村の調査員がより正確に判定できるよう、74の調査項目のうち43項目の内容が変更される。例えば、座った状態をどれだけ保てるかの項目では、「1分程度」から「10分程度」で評価することに変更。外出頻度を問う項目では、直近の対象期間を「3カ月」から「1カ月」に短縮し、その間の状態に大きな変化がなかったかも考慮する。
要介護認定者は2007年度時点で453万人を数える。7段階に分かれ、要介護度が重くなるほど受けられるサービスも多くなる。このため高齢者を抱える家族の中には重い判定を望むケースもあるとされる。
それにしても、半年足らずの間に基準が2度も変われば、介護現場は混乱を来すのではないか。市町村などへの周知徹底も欠かせない。基本は介護の実態を踏まえ、必要な人にはちゃんとサービスが受けられることだろう。公平で客観的な認定が行われなければ、介護保険制度自体の信頼が揺らぎかねまい。