国際宇宙ステーションで、日本人初の長期滞在という大役を果たした若田光一さんが無事に帰還した。日本の宇宙開発に新たな扉を開いた快挙に拍手を送りたい。
若田さんの宇宙滞在は4カ月半に及んだ。これまでの日本人飛行士は二週間前後の短期滞在が主だった。長期滞在の狙いは、巨大有人宇宙施設の運用ノウハウや、宇宙の人体への影響など将来の日本の有人活動に向けた経験蓄積である。
記者会見した若田さんは「非常に忙しい毎日だった。1週間ぐらいいて帰ってきたような、浦島太郎になったような感じがする」と語った。さぞ充実した日々だったのだろう。こちらも活力をもらった気がする。
若田さんは他国の飛行士とともに、国際宇宙ステーションでの実験や機器の維持管理に当たった。得意のロボットアームを駆使して日本の実験棟「きぼう」も完成させた。
無重力を利用した「宇宙おもしろ実験」は楽しませてくれた。同僚と綱引きや腕相撲などを行い、独特の明るいキャラクターで子どもたちの好奇心を刺激した功績も見逃せない。
従来の短期滞在では難しかったのが、宇宙での生活が人体に与える影響調査である。特に無重力では体を支える必要がないため、筋力が徐々に落ちて骨量も減少する。
若田さんは毎日2時間の運動をこなした上に、被験者として地上で使う骨粗しょう症治療薬も飲んだ。結果はこれから検証されるが、長期滞在を軌道に乗せるには欠かせない研究だ。
今後、若田さんに続く日本人飛行士の長期滞在が本格化する。巨額の費用がかかる事業だけに、今回の成果を積極的に情報公開し、国民の理解を深めながら進める必要がある。