岐阜県の裏金をめぐる日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」の虚偽証言問題で、NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、裏付け取材が不十分で「放送倫理違反の程度は重い」とし、再発防止策を盛り込んだ検証番組を放送するよう日テレに勧告した。
2007年に検証委が発足して以来、初の勧告である。勧告は裏付けをとらないままの放送について「幹部と現場スタッフが切り離されチームとして機能していなかった。責任が空洞化している」と組織構造上の問題を指摘した。また川端和治委員長は会見で、取材日が実質3日しかなかった実態に触れ、限られた態勢、時間で告発報道を行ったことに「根本的原因があったのでは」と述べた。
番組は昨年11月、匿名の男の証言を基に岐阜県が裏金づくりをしていると報じた。その後県の調査などで虚偽証言と判明。番組で謝罪し、今年3月に当時の日テレ社長が引責辞任、男は業務妨害罪などで今月、有罪判決を受けている。
虚偽証言の判明後、日テレが番組内で行った訂正放送に関しても川端委員長は「自分たちが被害者だったと釈明しているようにみえる」などと述べ、内容の再検討を求めた。
日テレは勧告を受け、検証結果を16日の同番組で伝えるとともに、17日未明に検証特別番組を放送する。誠実な検証はもちろんだが、日テレはバンキシャだけでなく番組制作全般に勧告を生かしてもらいたい。
今回のケースは氷山の一角であり、日テレだけの問題ではないとも言われる。現にいくつかの局で似たような事例が起きている。勧告を、放送界全体にとっての警鐘と受け止めなければなるまい。