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社説2 有人活動の真価示す成果を(8/2)

 宇宙飛行士の若田光一さんが約4カ月半にわたる国際宇宙ステーション滞在を終えて無事帰還した。日本の有人活動の拠点となる実験棟「きぼう」を完成させ、宇宙利用の礎を築いた労をねぎらいたい。

 スペースシャトルで帰還した若田さんは出発時と同じように笑顔がさわやかだった。限られた空間に長期に閉じ込められストレスもたまっただろうが、それを感じさせることもなく、精神力の強さには感服させられる。

 無重量状態の宇宙に長期滞在すれば骨の強度が下がるなど身体には様々な影響が出る。若田さんは骨粗しょう症を抑える薬を飲むなど自ら実験台になって貴重な医学データももたらした。今回の経験をほかの宇宙飛行士の長期滞在や今後の有人活動に役立ててもらいたい。

 若田さんの宇宙での活動は実験棟の組み立てに主眼が置かれていたので、宇宙実験は生命科学と流体現象などに絞られ、件数は少なかった。その結果、実験がそれほど注目されることはなかった。

 初っぱなだからこれは仕方がないにしても、いつまでも宇宙飛行士だけが目立って実験がかすむようでは実験棟建設の意義が疑われる。

 日本は宇宙ステーション計画への参加に伴い、有人活動や実験棟の建設にこれまで約7600億円つぎ込んできた。今後も運用や物資の補給、有人活動に毎年約400億円の費用を投じる。めぼしい成果がなかなか出なければ、有人活動や宇宙実験に厳しい目が注がれるだろう。

 宇宙利用に関しては新材料開発などに期待がかけられていた。しかし、最近はその期待が薄れてきている。医薬品開発につながる実験にはまだ期待は高いが、投資に見合う成果が得られるかは定かではない。

 宇宙実験は現在、100件程度が予定されている。産業利用でなく純粋科学でもいいが、投資に見合う成果が求められよう。研究者にはノーベル賞を狙うぐらいの気概で野心的な宇宙実験に挑んでもらいたい。

 政府は1年かけて将来の有人活動のあり方を検討する。有人活動は費用対効果を考えずに計画を膨らますわけにいかない。宇宙ステーションの成果なしに有人活動は進まない。

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