中央最低賃金審議会が、2009年度の地域別最低賃金の改定について、全国加重平均(時給)の引き上げ額を7〜9円とする「目安」をまとめ、舛添要一厚生労働相に答申した。今後、地方の審議会で都道府県ごとの改定額を協議し、各地の労働局長が決定する。
引き上げ幅は前年度実績(16円)を下回り、目安に沿って改定しても全国加重平均は710〜712円にとどまる。昨秋以降の不況の深刻化、厳しい経済情勢を反映し、賃金底上げには不十分な結果となった。
最低賃金が生活保護の給付水準を上回っている岡山、香川県など35県は「現行水準の維持を基本」として、引き上げ見送りが提案された。
一方、生活保護水準を下回る「逆転現象」が起きている神奈川、広島県など12都道府県では、時給2〜30円程度の引き上げを要請するとともに、2〜4年以内での逆転解消を求めた。昨年の目安で示された解消実現の目標年は、一部地域で先延ばしされた。
不況の逆風をもろに受けた答申といえよう。賃金引き上げは企業に負担を迫り、雇用に悪影響を及ぼす懸念もある。今回は賃金の底上げよりは雇用維持を優先させた面は否めまい。
厚労省は昨年7月、生活保護との整合性に配慮し、最低賃金を決めるよう定めた改正最低賃金法を施行した。労働意欲を損なわせないためにも、生活保護水準を上回るまで賃金底上げを図る努力はなお必要だろう。
民主党はマニフェスト(政権公約)に「全国平均で時給1000円の最低賃金を目指す」方針を盛り込んでおり、衆院選の争点の一つにもなりそうだ。中小企業などの雇用を支えるための環境整備も含め、各党で議論を深める必要がある。