会場使用契約の一方的破棄で集会や言論の自由を侵害されたとして、日教組などがプリンスホテル(東京)や役員らに約2億9千万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は全額の支払いと全国紙への謝罪広告掲載をホテル側に命じた。
問題は2008年の教研集会に絡んで起きた。日教組は07年3月以降、グランドプリンスホテル新高輪の大宴会場を全体集会の会場に使用することなどでホテル側と契約した。ところが、同11月になってホテル側が「右翼団体の街宣活動などで宿泊客や周辺住民への危険が予想される」と契約の破棄を通告した。日教組の仮処分の申し立てを認めて使用させるよう命じた東京地裁、東京高裁の決定にも応じず、全体集会は初の中止に追い込まれた。
判決は解約について「法的根拠のない一方的なもので、債務不履行は明白」と厳しく指摘。裁判所の決定に従わなかった姿勢を「司法制度無視で違法性が著しい」と断じた。その上で、集会を「意見や情報を交わして思想や人格を形成、発展させる場」と位置付け、参加は法律上保護されるべき利益に当たるとして損害賠償責任を認めた。
「集会の自由」は憲法で保障されている。不当に奪われることは民主主義の根幹を揺るがす問題である。今回の判決からは、その危機感とともにホテルの公共性を問う裁判所の姿勢がうかがえる。
ホテル側が言う拒否理由は契約前から予想されたはずだ。日教組や警察と打ち合わせて対策を講じることにこそ力を入れるべきではなかったか。ホテルが企業として負う社会的責任は重い。にもかかわらず、集会・言論の自由の軽視や法令順守意識を欠いた一連の行為は残念だ。社会の理解も得られまい。