当然の判決と言える。日教組に集会の会場を貸さなかった東京都内のホテルに東京地裁は損害賠償金の支払いなどを命じた。額は三億円近い。集会の自由を侵害した罪の重さをかみしめるべきだ。
日教組は教師や教育関係者が集まって教育のさまざまな問題を話し合う「教育研究全国集会」を主催している。昨年は二月二日から三日間、東京都内で開催したが、約二千人が参加する予定だった全体集会は中止となった。
会場を引き受けていた「グランドプリンスホテル新高輪」が一方的に契約を解除したからだ。日教組は二〇〇七年五月に会場を契約した。しかし、ホテル側は十一月になって解約を通知した。
「日教組の集会に反対する右翼団体が集まってホテル周辺で街宣活動するおそれがあり、ほかの宿泊客や近隣住民に騒音などの迷惑がかかる」という理由だった。
日教組は仮処分を申請し、東京地裁、東京高裁とも「解約は無効で、会場を使用させなければならない」と命じた。それにもかかわらず、ホテルは使用を拒んだ。
二十八日の東京地裁判決は「司法制度を無視した不当行為で、違法性は著しい」と批判した。法をないがしろにした態度を、裁判所が厳しく裁いたのは当然だ。
判決は「集会に参加する利益は法律上保護されるべきだ」と指摘した。ホテルは集会に参加しようとした教師らの宿泊予約も取り消しており、これにも賠償責任を負わなければならない。
ホテル側は使用を拒み続けたことで何を守ろうとしたのか。
右翼の妨害行為などは契約した時点で想定できたはずだ。日教組は警察に警備要請している。宿泊や集会の場を提供することを業とする会社であれば、警察や近隣と協力しながら、集会開催に向けて力を尽くすべきだった。
今年二月、広島市内で開かれた教育研究集会では大きなトラブルはなかった。法に問われるのは大音量の街宣車であり、主催者、会場、警察がその気になれば騒音迷惑は押さえ込めるだろう。
一流のホテルなのに、何の努力もせず、見えない右翼の“威圧”に屈しただけではないか。契約履行に向けて最大限努力するのが企業のあるべき姿勢だ。それが企業の信用というものではないか。
判決は日教組の請求額をすべて認めた。ホテルには金銭的支出が高くついたが、この問題で“のれん”についた傷もかなり深い。
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