HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 29 Jul 2009 20:18:34 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:国道凍結解除 許されぬ基準の後出し:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

国道凍結解除 許されぬ基準の後出し

2009年7月29日

 整備を凍結したはずの直轄国道十八区間のうち十七区間の建設が、わずか四カ月で再開される。「選挙目当て」の批判も強いが、問題なのは、事業評価の基準を後出ししたご都合主義だ。

 三月末に国土交通省が凍結を発表すると、関係の地元県知事ら自治体の首長、建設業界などの異論や要望が相次ぎ、自民党の道路調査会も凍結解除を求める決議を行い、国交相に申し入れた。

 意地悪く見ると、いったん事業を凍結、陳情が殺到するのを待ち、建設を再開−。総選挙を視野に入れた手の込んだパフォーマンス、との推測も成り立つ。

 もともと凍結されたのは、交通需要の予測を見直した上で、事業区間の建設費に比べ得られる効果が低く、費用対効果換算が1以下と判断されたからである。効果の基準は走行時間短縮、走行経費、交通事故減少という三つの便益を評価項目とした。

 ところが今度凍結解除の区間は四車線を二車線に(185号広島県安芸津バイパス)、立体交差を平面交差に(329号沖縄県与那原バイパス)するなど事業費を縮減する一方、三項目以外の「便益」を加えた再評価が目立つ。

 たとえば148号長野県小谷道路は冬場の安全向上、災害時の交通確保を効果に入れ、17号群馬県綾戸バイパスは防災上の観点も加え、建設再開となった。

 設計変更で事業費が縮減されるなら、当初計画は何だったのか。費用対効果の評価基準に新しい項目を中途で加えるのも、凍結解除を予想した上での「後出しじゃんけん」との非難を免れない。

 凍結された事業区間は、大都市圏からはずれたところが多い。地域の事情があるかもしれない。それなら、初めから評価基準として明示し、国民の理解を求めるべきである。

 凍結解除は地方整備局、沖縄総合事務局の事業評価監視委員会、北海道開発局の事業審議委員会の事業再評価を経た。いわゆる第三者機関で、大学教授、経済界、法曹界の代表ら学識経験者で構成する。過去のダム事業など審議の実情から、議論の公正さに疑問を呈する声も強い。整備局などの提案を追認するだけではないか、との批判である。

 道路整備を含む公共事業のうち何が必要で何が無駄か。国民の納得できる評価項目を基礎に、真に公正な第三者機関による透明な論議で決するべきである。

 

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