HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Last-Modified: Wed, 29 Jul 2009 17:03:05 GMT ETag: "26a862-52ed-291b0440" Content-Type: text/html Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 30 Jul 2009 00:21:07 GMT Date: Thu, 30 Jul 2009 00:21:02 GMT Content-Length: 21229 Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

米中戦略対話―歴史の転換に目を凝らす

 国交樹立から30年がたち、米国と中国の関係は歴史的な変化を遂げつつある。経済から安全保障まで様々な懸案を閣僚級で話し合った初の米中戦略・経済対話に、そんな思いを強くした人が多いのではないだろうか。

 ニクソン米大統領が72年に訪中して竹のカーテンを開け、米中は79年に国交を結んだ。それ以降の歩みは、超大国の米国が共産党独裁の発展途上国である中国を国際社会に引き込もうとしてきた過程だったといえよう。

 グローバル化の中で驚異的な経済成長を続ける中国は対米輸出などで貿易黒字をため込み、外貨保有も米国債の保有も世界一になった。米国との経済面の相互依存は世界同時不況を機にかつてない深まりを見せている。

 米国が危機対策の財源を確保しつつドルの安定を図るには、中国による米国債購入の継続が欠かせない。貿易不均衡を是正するにも、中国が財政出動をてこに内需主導への転換を進めるよう期待せざるを得ない。

 一方、米国の危機が長期化したり、財政赤字が拡大したりしてドルが下落すれば、中国は保有する米国債の目減りで損をこうむる。

 こうした関係にある両国が対話を本格化させたことは必然的であり、世界の安定にとっても意義深いことだ。

 北朝鮮問題では、国連安全保障理事会による制裁決議履行の重要性を改めて確認しただけでなく、米国が検討中の対北朝鮮包括提案を中国が後押しすることでも合意した。米中の結束は北朝鮮問題解決の鍵だ。

 地球温暖化についての政策対話の枠組みを創設することになったほか、イランや中東問題での高官協議緊密化にも合意した。どれも成果を得るには大きな努力が必要だ。

 米中の凪(なぎ)状態がいつまでも続くという保証はない。とはいえ懸案に外交的に取り組む態勢はできたといえよう。

 それにしても、今回の対話で米国の中国への気遣いは尋常でなかった。オバマ大統領は「米中関係が21世紀を形作る」と2国間関係を持ち上げ、「山中の小道は、使ってこそ道となるが、使わなければ茅(かや)でふさがれてしまう」と孟子の言葉を引用して協力と対話の継続を強調した。人民元切り上げについての注文はしなかったという。

 新疆ウイグル自治区での騒乱についても、突っ込んだ議論はされなかった模様だ。「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席は「米国は冷たく、失望している」と話した。

 「米中G2」時代の始まりという見方もできる。しかし、温暖化問題ひとつをとっても、両国の世界に対する責任は重い。だからこそ日本の役割が重要になる。経済も安全保障も日米中で取り組むべき課題は山ほどある。日本に新たな構想が求められる。

論点・安心と負担3―分権とセットで考えよう

 医療や介護、子育て支援の充実のために税金などの負担が増えるのは仕方ないとして、では増えた分の資金はどこが差配して使うのか。中央政府か、あるいは現場で福祉サービスを担う自治体か。負担のあり方を考える時に、この視点は欠かせない。

 社会保障の制度の多くは、中央政府が仕組みや基準を決め、中央が集めた資金を自治体に流して、利用者に現金やサービスが届く。生活保護や児童手当はその代表例だ。費用の一部は自治体も負担する。

 これとは別に、地域医療を支える公立病院や乳幼児への医療費助成、公立の老人福祉施設や保育所といったように、自治体が独自に実施しているものも多い。

 中央が補助金で支えている部分もあるが、国民の安心のために自治体は大きな役割を果たしているのだ。

 さて、社会保障の強化のために税金を増やした場合、それをそのまま今の中央と自治体の分担の構図に載せてしまっていいものだろうか。

 答えははっきりしている。限りのある資金なのだから、地域の実情に応じて効率的に使いたい。大きな負担をする以上、その使い方にも目を光らせたい。それができてこそ、負担と受益の関係についての納得感が生まれる。

 納税者に身近なところ、つまり自治体への配分を重視すべきなのだ。

 自民党も民主党も、将来的な社会保障の財源として、消費税の増税に目をつけている。今でも消費税収の一部は自治体の財源に回されているのに、そのすべてを年金の財源にあてるといった議論が出ているのは、いかにも乱暴ではなかろうか。

 むしろ、消費税率を上げるとすれば、ただでさえ深刻な財源難に陥っている自治体の取り分を増やすことを考えるべきではないのか。

 消費税収を年金にあてるというなら、自治体が担う社会保障の財源はどう手当てしていくのか、具体的に示してもらわねばならない。

 消費税に限らず、税源を自治体に移すにあたっては、人口や企業などの多い大都市ばかりに税収が集中しないような工夫は必要だ。そのうえで、いかに効率的で、質のいいサービスを提供できるか。その観点から分担のあり方を考えたい。

 つまり、地方分権の拡大、深化とこの議論はセットで進める必要があるということだ。

 お金の配分だけでなく、中央政府と都道府県、市町村でどのように権限や仕事を分担するのが効率的なのか。道州制を導入するなら、そこにどう絡めてくるのか。社会保障をめぐる負担の問題に限った話ではない。

 次回は最後に、安心を裏打ちする財源のあり方を考えたい。

PR情報