HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 28 Jul 2009 21:19:04 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:産業革新機構 官の関与が過ぎている:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

産業革新機構 官の関与が過ぎている

2009年7月28日

 政府が官民投資ファンド「産業革新機構」を発足させた。先端産業を支援し成長を促す−が目的だが出資を見送る企業が少なくない。官の関与を最小にし、企業家精神を後押しする道を進むべきだ。

 金融危機を境に新規事業向けの民間資金が急速に細った。国が代わって資金供給を引き受けねばならない。ということで、二階俊博経済産業相は「次世代産業の芽を育ててほしい」と機構の発足式で奮起を促した。

 政府出資は八百二十億円、金融機関からの借り入れにも八千億円の政府保証をつけるので資金量は巨額だ。支援対象も「成長性が見込める」などの条件を満たせば業種を問わない。企業には魅力的に映るはずなのだが、トヨタ自動車やキヤノンなどの有力企業が相次ぎ出資を見合わせ、民間出資は十六社、八十五億円にとどまる。

 多くの企業が米国景気の落ち込みによる輸出急減や国内消費低迷で収益が悪化した。出資に応じる余裕に乏しいことは確かだが、理由はそれだけではない。「アイデアもなく、カネさえつぎ込めば何とかなるとでも思っているのか」「官僚の新たな天下り先のためではないか」などと、機構の設立をいぶかる企業が多い現実も見逃すわけにはいかない。

 機構は官民共同のファンドだが、実態は官製「日の丸ファンド」に等しい。多くの企業が横を向いたままで、民間の活力を引き出せるのか。企業の抱く疑念を払拭(ふっしょく)する運営が何より求められる。

 米国ではオバマ大統領が低炭素社会を目指して掲げたスマートグリッド、いわゆる賢い送電網計画に、グーグルなどの通信・ソフト産業に加え、ベンチャー企業も続々と名乗りを上げている。温暖化防止に挑み、事業機会を広げようとする企業家を支援し、雇用の拡大にもつなげる野心的な政策だ。

 トヨタのハイブリッド車は「環境対策なしには生き残れない」という経営トップの大号令で、世界標準を引き寄せるまでに育った。環境技術を例にとるならば、どう低炭素社会を築くかという中長期の骨太のビジョンをはっきりと示し、民間の力を誘うのが本来の姿ではないのか。

 政府主導につきまとう税金との関係も監視を怠れない。投資に失敗すれば税金での損失補填(ほてん)もあり得る。投資先の十分な目利きが不可欠だ。言うまでもないが、資金投入が技術革新という事業目的から逸脱して、企業救済と疑われることがあってはならない。

 

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