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社説2 最低賃金上げへ不断の努力を(7/29)

 地域別最低賃金の改定が今年は足踏みすることになった。引き上げの目安を議論していた中央最低賃金審議会の小委員会は、35県について「現行水準の維持を基本」とし、最低賃金が生活保護費の水準を下回る12都道府県に限って引き上げを求めることを決めた。

 大部分の地域で現状維持の方向を出したのは、今年の中小企業の賃金改定が前年比0.2%減と過去最悪だったことを考慮してだ。最低賃金の引き上げは全国平均で一昨年が時間あたり14円、昨年は16円と2年連続で大幅になったが、今年は7〜9円にとどまる。厳しい経済情勢を反映し、中小零細企業の負担を考えると仕方のない面もあるだろう。

 ただし日本の最低賃金は今年の改定後でも時給710〜712円と、先進諸国に比べるとまだ低い水準にある。最低賃金の引き上げは働く人の意欲を引き出し、生産性を向上させる効果があり、日本の活力を高めることにもつながる。世界同時不況の影響で今年は小休止した形だが、経営者や政府は改定に引き続き努力してほしい。

 最低賃金が生活保護支給額を下回っている12都道府県について小委員会報告は、緊急避難措置として、昨年から始まった格差解消のための期間の1年延長もやむを得ないとした。東京都の場合は今年から2年で最低賃金を時間あたり60円上げ、生活保護費との差をなくすことにしていたが、3年に分けて引き上げてもいいというわけだ。

 12都道府県の地方最低賃金審議会はそれぞれ、1年延長は報告の通り「緊急避難措置」であると認識し、できるだけ格差解消を急ぐべきだ。最低賃金が生活保護費より低ければ就労意欲がわきにくい。最低賃金を一気に上げれば企業の負担が増え、雇用が減る心配があるが、いびつな構造を長引かせれば結局地域のためにならない。

 最低賃金を守らない事業所は依然として多い。厚生労働省が昨年末にまとめた一斉監督結果では、全国約1万9000事業所のうち6.6%で違反があった。最低賃金をめぐっては中期的に額の底上げ、足もとでは法令順守と、経営者はいくつも課題を抱えている。

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