民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)を発表し、各党公約が出そろってきた。自民党も早急に示し、政権選択にふさわしい「決戦の舞台」を整えてほしい。党首間の公開討論もぜひ早く。
鳩山由紀夫民主党代表は二十七日の記者会見で、マニフェストを自ら公表した。選挙で勝利すれば「民主政権」の目玉政策に位置づけられるものだ。中身について、内外の関心をこれほど集めたのは結党以来初めてのことだろう。
マニフェストの表紙には「政権交代」の四文字を大きく掲げた。家計で使えるお金を増やし、生活不安を解消する。そのため、子育て・教育、年金・医療などの分野で約束を掲げたのが特徴だ。
一昨年の参院選公約で打ち出した「国民の生活が第一」の路線を踏襲した。二〇一一年度からの子ども手当満額支給や、高速道路の原則無料化などが盛り込まれた。財源は予算の無駄遣いの根絶や埋蔵金活用などで一六・八兆円を生み出すとしている。
一連の政策を実行するチームとして、首相直属の「国家戦略局」や、国の事業を見直す「行政刷新会議」を新設するという。官僚主導の象徴だった事務次官会議は廃止する。
先の見えない閉塞(へいそく)した空気打破へ、チェンジを求める世間の風は強い。霞が関依存型の自公政治から決別し政治主導の新しい国民政権を目指す、これが民主マニフェストの立脚点のようだ。
自民は財源確保策が非現実的、消費増税に言及しないのは無責任と批判に躍起だ。政権交代を期待しながら「民主政権」に不安を抱く有権者は少なくない。ムードだけに頼らず、どれだけ丁寧に分かりやすく説明できるかが課題だ。
各党マニフェストでは、公明は「生活を守り抜く」、社民は「生活再建」、国民新は「輝け日本」がキーワードだ。共産は基本的立場として「建設的野党」を打ち出す。生活重視は共通項のようだ。自民も早く示さないと、本当の意味での対決は始まらない。
同時に各党は党首公開討論を積極的に行うよう調整すべきだ。家計支援策や財源論にしても、激しい論戦を重ねてこそ違いが鮮明になり、有権者の判断材料も増えよう。幸い時間は十分ある。
麻生太郎首相も異存はあるまい。前例にとらわれず、実行してほしい。党首討論という緊迫した場面ならば、高齢者を怒らすような不用意な発言は出ないだろう。
この記事を印刷する