賜杯の行方が千秋楽まで持ち越される熱戦となった大相撲名古屋場所。安定感ある相撲を展開した横綱白鵬が、大関琴欧洲の追撃を振り切って2場所ぶり11度目の優勝に輝いた。
今場所最大の注目は何といっても先場所優勝の大関日馬富士の綱とりだった。それが早々と消え、がっかりするファンを再び熱中させたのが白鵬と琴欧洲の優勝争い。日本人力士の意地をかけた大関琴光喜の健闘も盛り上げに貢献した。
力士の気迫のぶつかり合いこそ相撲の醍醐味(だいごみ)だと、あらためて実感させられた。そんな心地よさに水を差す出来事が持ち上がった。追手風(おいてかぜ)親方による部屋所属の床山に対する暴力行為である。
親方は新弟子いじめを繰り返す床山に反省を促すため、3月の春場所中に殴りけがを負わせたという。いじめを受けた力士らにも殴るよう指示した。床山は退職した。
親方が言うような状況だったとしても、厳しく注意し、改まらなければ毅然(きぜん)として処分することもできたのではないか。一昨年に起きた時津風部屋の力士暴行死事件を受け、日本相撲協会は暴力の一掃に乗り出したが、根は深いようだ。
親方たちの意識改革へ、協会の負う責任は重い。そのためにも今回の事実関係の把握と対応が急がれる。協会の軍配さばきに、角界の再生がかかる。