国連の専門機関、国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会が国際海運の温暖化ガス削減対策の大枠を決めた。大型船舶のエネルギー効率指標、自動車でいえば燃費効率にあたる基準を新たに設ける。世界一律の強制力のある指標になるか、まだ予断を許さないが、実施できれば船舶から出る二酸化炭素(CO2)排出抑制につながる。
国際海運からのCO2排出量は約8.5億トン。世界全体の排出量の約3%に達し、日本の総排出量(約13億トン)には及ばないが、ほぼドイツ1国並みに相当する。貿易の拡大とともに増加傾向にあり、排出抑制が強く求められている。
国境をまたぐ国際海運と航空は、温暖化ガス排出削減の国際枠組みを決めた京都議定書の対象外になっており、それぞれの専門機関に対応の決定を委ねている。IMOが決めた国際海運の規制枠組み(ガイドライン)は、京都議定書に続く新しい排出削減の枠組みを話し合う12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)に報告される。
これから建造する新造船に対しては船の大きさなどに準じて、1トンの貨物を1マイル運ぶ際に出るCO2量の指標を設け、指標を満たす設計とすることを各国に求める。技術の発展に伴い指標は段階的に高めていく。既存船に対しては実際の排出量を測定し海運会社に対し削減計画の作成と実行を求める。海運会社は最適なルート選びや船舶のメンテナンスを通じて達成を目指す。
燃費指標の具体的な数値は今回は決まらなかった。また規制に強制力をもたせるのに必要な海洋汚染防止条約の改正は来年に持ち越した。国際海運の取り決めは世界一律が原則ではあるが、中国など途上国は気候変動枠組み条約の「共通だが差異のある責任」の原則に基づいて一律の強制化には反対しており、COP15の交渉の行く末を見守る形だ。
日本は貿易国として海運の排出削減に責任がある。同時に造船国として日本の省エネ技術を世界に売り込む好機でもある。世界の新造船建造に占める日本のシェアは約3割で韓国に次いで世界2位だ。海運のグリーン化を日本の造船や海運の競争力強化につなげていきたい。