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天声人語

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2009年7月28日(火)付

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 昼下がり、職場から南の空を望んだ。かなたの入道雲を背景に、ジャンボ機がゆっくり羽田に降りてゆく。青空に盛り上がる雲は真夏を語る景色である。〈脱ぐシャツの中で笑ふ子雲の峰〉冨田正吉▼「週刊・日本の歳時記」(小学館)で、入道雲を「上昇気流が生み出す夏の白い砦(とりで)」と記した俳人は長谷川櫂(かい)さんだ。雲の峰の異称は、中国の古い文人画家が「夏雲(かうん) 奇峰多し」と詩に詠んだことから生まれたという▼むくむくと光り輝く奇峰の群れは、しかし離れてこその絶景であって、「砦」の中は大荒れになっていることが多い。積乱雲と言い直せば、なにやら耳奥で遠雷が鳴り出す。西日本につめ跡を残した大雨も、入れ代わり立ち代わり、この雲が現れたせいらしい▼地元の気象台によると、湿った空気が太平洋高気圧を回り込むように、九州北部の梅雨前線へと流れ込んだという。いわゆる「湿舌(しつぜつ)」だ。湿った空気を乗せた風が、対馬海峡あたりで東よりの風とぶつかり、活発な積乱雲が次々にわいた▼空の水源を決壊させた雲の連なりは、気象衛星からは先細りの扇状に見える。「にんじん雲」というかわいらしい名とは裏腹に、豪雨、突風と災いの巣である。「舌の上のにんじん」には用心したほうがいい▼窓外の連峰は夕立の中に消えたが、後で虹が出た。この時期の空は千変万化。雨域は東へ北へと広がり、群馬では竜巻らしき突風が暴れた。沖縄と北海道を除き、月内はすっきりしそうにない。弱いとされる太平洋高気圧が前線を押しやるまで、ひと辛抱要る。

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