大手スーパーのイオンが農業に参入することになった。9月から茨城県内の農地を借りて野菜生産に乗り出し、自社の店舗で販売する。閉鎖的だった農業分野も規制緩和が徐々に進み、これから企業の農業参入は一段と加速する可能性が高い。
企業の農業進出をめぐっては、既にイオンのライバルであるセブン&アイ・ホールディングスや居酒屋チェーン、食品メーカー、建設会社などが相次いで農業を始めている。
企業が農業を新たなビジネスチャンスととらえる理由はいくつかある。まず農家の高齢化や担い手不足による農産物供給の不安定化が挙げられる。
食の安全にまつわる問題も大きい。特に食品関連の企業では、生産段階から履歴のはっきりした商品を扱っている点をアピールできるメリットがある。
コスト問題も重要だ。農協や青果市場などを経る既存の流通ルートではさまざまな経費がかかり、日本の農産物の価格が高い一因になっている。自社で生産から小売りまで手掛けることでコストが省け、価格を抑えられる強みが生じる。
耕作放棄地の増加など農業基盤が弱体化する中、国も企業の農業参入を容易にする環境を整えてきた。今年6月には農地法を抜本改正し、農地の貸借を大幅に自由化した。
これに対し、農家や農協などの間では企業の参入を嫌うムードが根強い。経営圧迫の懸念などがあるからだ。しかし、後継者難などを考えると、担い手多様化策の一つとして企業の参入促進は必要だろう。
農業経営が軌道に乗った会社では、地域の雇用創出につながる例がある。農家の栽培ノウハウは畑違いの企業にとって貴重だ。互いが融和する形で農業活性化につなげてもらいたい。