文部科学省所管の統計数理研究所が、日本人の意識を探るために5年ごとに実施している「国民性調査」の結果がまとまった。日本の社会全体を覆う閉塞(へいそく)感が指摘されているが、将来に明るい展望が持ちにくく、不安やいらだちを覚える人が増えている実態があらためて浮き彫りになった。
調査は昨年10〜11月、全国で20歳以上の6400人を抽出し、52%が面接で答えた。米国の金融危機をきっかけに日本でも景気後退が深刻化してきたころだ。厳しい経済環境も結果に反映しているといえよう。
人々の生活がどうなるかを尋ねた質問に、「貧しくなる」と答えた人が57%で過去最高になった。2003年の前回調査に比べると、10ポイントもアップした。逆に「豊かになる」とした人は前回より3ポイント減の11%で過去最低だった。
“いらいら”も過去最高だった。「1カ月以内に、いらいらしたことがある」と答えた人は48%に上った。特に若年層で目立っており、20代で63%、30代で62%と、ともに初めて60%を超えた。
社会の満足度は、「満足」と「やや満足」を合わせても30%にすぎなかった。これは前々回から横ばい傾向が続いている。では、「不満があるときにどうするか」をみると、「選挙で考慮する」が前回より9ポイントも増えて55%に上り、過去最高だった1998年の51%を上回った。衆院選がある時に「何をおいても投票する」も前回より5ポイント増の40%だった。
医療、年金など社会保障制度への信頼が大きく揺らぎ、景気後退により人々の生活を下支えするセーフティーネットのほころびが顕著になった。総選挙が迫っている。政治の責任が厳しく問われることになろう。