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天声人語

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2009年7月27日(月)付

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 身体の露出が増えるからだろう、夏の前にはダイエットをうたうサプリ類の売れ行きが伸びると聞いたことがある。〈体重が増えしか水着が縮みしか〉前田千恵子。万人の心にひそむ飽食時代の「恐怖」が、ユーモラスに透けている▼だが、笑えない恐怖が昨今、若い女性の間に募っているらしい。「やせ願望」が「食べることへの罪悪感」に近づいている深刻な実態を、先ごろの小紙が報告していた。当たり前の成長なのに「太った」と悩み、食が細る10代もいるらしい▼日本学校保健会が調べると、今よりやせたいと思う女子高生は9割近くにのぼっていた。思いが高じたあげく摂食障害に悩む人もいる。気づかぬまま陥っていることもあるというから要注意である▼日本だけではない。イタリアでは摂食障害が、若い女性に多い死因の一つになっているそうだ。スペインでは、やせ願望をあおる細身の衣服を陳列せぬように、百貨店が申し合わせたと聞く。ソフィア・ローレンのような豊満は、今は昔の美学になったのだろうか▼「楚(そ)の荘王、細腰(さいよう)を好み、故に朝(ちょう)に餓人あり」と中国の『荀子』にある。ほっそりした女性を好む王の寵愛(ちょうあい)を得ようと、娘たちは競って痩身(そうしん)術に励んだ。そして餓死者が相次いだという故事である▼現代の娘さんたちは、誰(た)がために身を細らせるのだろう。関連する業界やメディアが作り流す「美」のイメージは、人工的で、生身の人間からは遠いように思われる。「水着が縮んだのよ」と笑い飛ばすおおらかさが、周囲にも、彼女たちにもほしい。

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