北朝鮮が五月の核実験以来初めて、安全保障の国際会議に出席した。実験の正当性を主張したが、参加国の多くが非難した。これ以上孤立の道を進まず、六カ国協議に復帰すべきだ。
「北朝鮮にはもう友人はいない」。タイで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で、クリントン米国務長官は北朝鮮の現状をこう表現した。
ARFは加盟国に国連安保理制裁決議の履行を求め、六カ国協議の早期再開を支持する議長声明を採択した。北朝鮮は東南アジア諸国と比較的良好な関係を持つが、核とミサイル実験により大きな代価を支払った。
それでも注目すべき動きもあった。クリントン長官は会議前日の会見で、北朝鮮が後戻りできない非核化に合意するなら「米国などは関係正常化を含む包括的な措置を取る」と呼び掛けた。別の国務省高官も訪問先の韓国で、「米国を含む関係国は北朝鮮が魅力を感じられる包括的な提案ができる」と述べた。
制裁を柱とする圧力だけでなく、六カ国協議の枠内での米朝対話の用意を込めた。
提案の内容は日本、韓国との協議が始まったばかりで、まだ固まっていないようだ。核問題、エネルギーや経済支援、関係改善から恒久的な平和体制の構築まで一括してテーマとし、周辺国の役割も決めて事態打開を図るものとみられる。
北朝鮮側にも微妙な変化があった。ARFに参加したリ・フンシク外務省局長は米国の提案にはまったく関心を示さなかったが、米国との対話には含みを持たせた。一時、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を準備中という情報があったが、その動きは止まったようだ。
北朝鮮が対話の場に戻るのか、楽観はできない。金正日総書記が健康不安を抱え、後継体制を確立し国内を引き締めるための軍拡路線を進めているからだ。
だが米国が関係改善を視野に入れた提案があると呼び掛けたことを無視するのは、得策ではなかろう。北朝鮮指導部は強硬策をいったん自制し、対話を検討すべきではないか。
中国の役割も重要だ。核実験以来、中朝関係は冷却化しているとされる。中国には食糧、エネルギーの支援をてこに、北朝鮮を六カ国協議に復帰させる努力を重ねて求めたい。
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