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社説2 迫り来る雇用調整の足音(7/25)

 企業の生産や輸出はやや持ち直してきたが、雇用悪化への懸念はぬぐえない。2009年度の経済財政白書は09年1〜3月期に企業が抱える過剰雇用、いわゆる「企業内失業」が約600万人にのぼり、1980年代以降で最大の規模に拡大したと試算した。潜在的な雇用調整の圧力に警戒が欠かせない。

 昨年9月のリーマン・ショック後の世界同時不況を受け、日米欧や中国は巨額の財政出動で需要を支えた。政策の効果に加えて企業の在庫調整も進み、生産活動は最悪期を脱しつつあるが、その水準は危機以前に比べてずっと低い。そのため雇用が余剰気味になっている。

 白書の試算によると、企業が実際に雇っている常用雇用(正社員)の数は、いまの生産規模に見合う雇用者数を607万人も上回っている。バブル崩壊後の長期低迷とデフレに苦しんだ99年当時でさえ、企業内失業は300万人台だった。今回の景気悪化が急激だった点を割り引いても、空前の規模の過剰といえる。

 雇用調整助成金などの政策も活用して人減らしを避けてきた企業が、今後も過剰雇用を抱え続けられるかどうかが問題となる。実体経済が順調に回復して生産が元に戻れば問題は少ない。だが低迷が長引くと、余裕のなくなった企業は正社員の削減に一斉に動きかねない。

 失業が増え、雇用不安が高まると家計は消費を切りつめ、景気は一段と冷え込む。白書は景気の下振れリスクとして、第一に「大幅な雇用調整」を挙げた。

 雇用悪化は世界共通の現象だ。米欧では失業率が10%の大台近くに上がり、日本も5月の完全失業率が5.2%と過去最悪の5.5%に近づいた。非正規社員だけでなく、正社員に対する雇用調整の圧力が日増しに高まっているのは確かだ。

 企業が雇用維持に全力を尽くすのは当然だが、そこに限界もある。企業の雇用維持へ十分な支援策を続けると同時に、新たな雇用の受け皿となる産業を伸ばす政策が必要だ。

 製造業派遣労働の大幅制限などで規制を強化しても、雇用のパイは増えない。1カ月後の衆院選に向け、与野党は雇用創出にどう取り組むかを政権公約で明示してほしい。

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