民主党が外交・安保政策で現実路線にかじを切った。衆院選後の政権担当を意識したのだろうが、どこまで熟慮の上なのか。基本政策でぶれている、と受け取られるようでは心もとない。
民主党は二〇〇九年版の政策集を公表した。今年の中身は近く発表されるマニフェスト(政権公約)の土台になる。政権交代が現実味を帯びるだけに、執行部は書き方に気を使ったようだ。
特に注目を集めているのが、外交や安全保障政策である。
民主は日本外交を「対米追随」と批判してきた。昨年の政策集では、自衛隊によるインド洋での給油活動を「反対」と明記。アフガニスタン本土での自衛隊の人道復興支援を盛り込んだ「テロ根絶法案」の必要性に言及していた。
今回は「反対」や「テロ根絶法案」の文字が消え、当面は給油活動継続を容認する方針を事実上打ち出した。
国連安保理決議に基づく北朝鮮への制裁としての貨物検査も「実施」方針を表明。ソマリア沖の海賊対策では、文民統制を徹底する仕組みを整えた上での自衛隊派遣にゴーサインを出している。
自衛隊の給油活動については、継続反対で一時撤収に追い込んだ経緯がある。従来方針を貫けば、政権発足早々、米側とのあつれきを招きかねないとの「現実的判断」が働いたようだ。
実際、日米地位協定でも「改定着手」から「改定提起」へと表現を弱めた。米軍のいいなりと問題視した「思いやり予算」については、表記すらされなかった。
連立や協力相手に想定する社民党などは、民主の現実路線傾斜を強く批判している。政権に就きそうだからといって米への配慮を重ねていけば、自民とどこが違うのかと有権者にも映るだろう。
対等な関係の下、新時代の日米同盟を確立するのが、民主の外交方針という。首脳間の信頼関係を築いた上で、課題を実現する、というのが執行部の考えらしい。
ならば、例えば民主が掲げる沖縄の米軍普天間飛行場の県外移設に関し、候補地や時期も含め具体策を示すべきだ。外交の座標軸を明確にし説明することだ。細部をぼかしたままでは、古い政治手法と批判されても仕方ない。
迷走を重ねた麻生太郎首相に「ぶれた」と批判されるようでは、情けない。有権者が安心して国のかじ取りを託せるか、民主の説明力が問われる場面だ。
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