HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 25 Jul 2009 03:18:46 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:「ドッペる」とは、ひと昔前の学生語の一つだ。若い女性のこと…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年7月25日

 「ドッペる」とは、ひと昔前の学生語の一つだ。若い女性のことを「メッチェン」という類(たぐい)で、ドイツ語由来▼いつからか、英語に置き換わり「ダブる」というようになったが、要は、落第すること。二重や二通りの意で、生き写しの“もう一人の自分”を見る幻覚、「ドッペルゲンゲル」のドッペルも同断。ゲンゲルは歩く者といった意味らしい▼この現象、小説や映画の材になることも少なくなく、芥川龍之介の『二つの手紙』も一例だ。<第二の私と第二の私の妻>、即(すなわ)ち自分と妻のドッペルゲンゲルに悩まされる大学教師が恐怖と苦衷を訴える手紙の形式をとった短編である▼さて、米保険大手傘下のアリコジャパンから、クレジットカードで保険料を支払っている顧客の情報が大量流出したのだという。原因は不詳だが、カード会社からの不正使用の照会は既に約千件に上り、さらに増える恐れもある▼名前やカード番号を勝手に使い、知らない所で買い物を楽しむ“もう一人の自分”。それを利用明細に認めた時の顧客の心中を察する。いわば“情報のドッペルゲンゲル”に遭遇したような気味悪さであろう▼元部長代理による大量持ち出しが発覚した三菱UFJ証券の一件もある。ことに金融界は顧客情報の重みを再認識すべきだ。さもないと、顧客の信頼という大事な試験を「ドッペる」ことにもなりかねない。

 

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