中高年の登山客ら10人が死亡した北海道・大雪山系の遭難事故から1週間がたち、自力で下山したツアー客の証言から山中での極限状況が明らかになってきた。悲劇を繰り返さないために、事故原因の徹底的な究明が大切だ。
事故は大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)と美瑛岳(2052メートル)で相次いだ。トムラウシ山では、東京の旅行会社主催のツアーに参加した倉敷市の女性ら8人が亡くなった。司法解剖の結果、全員が低体温症による凍死と判明した。
ツアーは、北海道最高峰の旭岳側からトムラウシ山まで四十数キロを2泊3日で縦走する予定だった。しかし、天候が悪化し、雨にぬれ、稜線(りょうせん)では吹きすさぶ風に体力を奪われて遅れる人が出るなど、次第にばらばらになった。
旅行会社によると、ツアーにはガイド3人が同行していたが、2人は同社のガイドとしては初行程だったという。ガイドの1人も亡くなっている。
悪天候の中でガイドはなぜ縦走を続けたのか疑問だ。ツアーには北海道、静岡、愛知、岡山、広島、山口など全国各地からの参加があった。寄せ集めのグループでは、参加者それぞれの都合を考えると日程を変更しにくいとされ、無理な行動につながったとの指摘がある。
事故の背景には手軽に参加できる登山ツアーの危うさがうかがえる。参加者の登山歴や体力にもばらつきが考えられるが、十分配慮していたのだろうか。
北海道警は、ツアー主催の旅行会社本社などを安全管理に問題があったとみて、業務上過失致死の疑いで家宅捜索した。捜索で客の装備品リストや登山行程の記録などを押収した。全容を解明し、安全な登山ツアーの教訓にしなければならない。