オバマ米大統領の就任から半年。イラク戦争と戦後最悪の経済危機で傷を負った米国の再生を掲げ、黒人初の大統領として国民の大きな期待を背に登場した大統領は、政策の方向性を示す段階を終え、具体的成果を問われる時期に入る。
オバマ政権が1月に発足した後、最優先したのは経済危機への対応だった。2月に総額7800億ドルにのぼる大型景気対策法案を成立させ、春には大手金融機関の健全性審査の結果を公表、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の一時国有化と矢継ぎ早に対策を打ち出した。
こうした対策の効果もあって、春先以降は金融市場もかなり落ち着きを取り戻し、「経済の最悪期は脱した」との見方も浮上している。
外交では、核軍縮推進、イスラム世界との共通基盤の追求、悪化しつつあったロシアとの関係のリセットなどを打ち出し、各国からおおむね歓迎されている。国際協調路線や地球温暖化対策での積極姿勢などで、ブッシュ前政権からの変化を世界に印象づけることに成功した。
とはいえ、北朝鮮への対応、イランとの対話、中東和平の推進など、多くの外交の重要課題で、具体的な展望はまだ開けないままだ。
「経済再生」でも難題は山積している。政権発足当初に70%を超えていた支持率も、最近の世論調査では60%を割り込み始めた。なお高水準だが、圧倒的なオバマ人気には陰りも見え、特に最近は経済政策への支持率の低下が目立ってきている。
経済の最悪期を脱したとしても、企業は新規雇用に慎重で、6月の失業率は9.5%に上昇した。米国民の多くは、景気対策の効果を実感できる状況には至っていない。
看板政策である医療保険制度改革について、オバマ大統領は年内実現の意欲を示す。だが、財政悪化や企業の負担増への懸念があるため、共和党だけでなく一部民主党議員からも反発が出ている。経済政策で議会との調整のハードルは高い。
追加景気対策を求める声もあるが、財政赤字が急拡大するなかで長期金利の上昇を抑え、ドルの信認をどう維持するかという難問も抱える。期待先行の半年が過ぎ、大統領の指導力がこれから試される。