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7月22日付 よみうり寸評

 特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」(山口県防府市)の惨状に息をのんだ。「まるで津波のような土石流だった」と被災者◆裏山から崩れた土砂や石がガラスを割って容赦なく屋内に押し寄せ、流れて行く。車いすで昼食中だったお年寄りたちを直撃した。最も弱い人たちを最も恐ろしい災害が襲ったかたちだ◆昨年の岩手・宮城内陸地震の「駒の湯温泉」の惨状を思い起こす。また土石流が大暴れだ。あれは地震が引き起こしたが、今回の防府市は活発な梅雨前線による記録的な集中豪雨が招いた◆きのう、防府市では過去にない激しい降りだったという。「まるで津波」という表現に古くからの言葉〈山津波〉を思う◆全国治水砂防協会刊の労作「土石流のはなし」(西本晴男著)によると、他にも「鉄砲水」「山潮」「山抜(やまぬけ)」……の名が多数◆「土石流」の語は大正期の創案らしいが、広く使われ始めたのはここ30年ほど。名だけでなく、そのスピード、予測の困難など猛威にまだまだ認識が足りないのではないか。

2009年7月22日13時48分  読売新聞)
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