国際宇宙ステーション(ISS)における日本の実験棟「きぼう」の完成で、地上では不可能な実験などができるようになった。この成果を十分に生かし、将来の宇宙進出の足がかりとしたい。
「きぼう」の最後の構成要素である「船外実験施設」は、スぺースシャトル「エンデバー」の燃料漏れや悪天候のために再三打ち上げが延期された末、ようやくISSに届いた。これを三月からISSに長期滞在中の若田光一宇宙飛行士が得意のロボットアームを駆使して「きぼう」に取り付け、無事に完成させた。
「きぼう」は当初、二〇〇二年に完成予定だったが、米航空宇宙局(NASA)の計画変更やシャトル事故などのため、大幅に遅れた。昨年三月から三回に分けて打ち上げられ、一、二回目は土井隆雄、星出彰彦の両飛行士が同乗して宇宙で組み立て作業を行った。
ISSには米、欧州各一基、ロシア二基の実験棟が設置され「きぼう」は五基目だが、六つの構成要素から成り、最大規模を誇る。
「きぼう」では微小重力環境を利用した高純度のタンパク質の結晶づくりなど物質科学や、宇宙空間で骨がもろくなるのを防ぐ宇宙医学実験などが既に始まり、今後も多様な実験が行われる。
米国はシャトルの使用を来秋に打ち切り、その後地上とISSとの往復はロシアの宇宙船「ソユーズ」が引き継ぐ。ISS自体がいつまで運用されるかはっきりしないが、わが国はISS参加計画にこれまで約八千億円を投入し、今後の投入資金を含めると総額で一兆円近くになる。それだけにこれまでの実験成果などをどう生かすかが今後大きな課題になる。
これを踏まえ政府の宇宙開発戦略本部は五月、二〇年ごろ月面無人探査を行い、有人探査について今後一年間、技術的課題などを検討する基本計画をまとめた。
月面有人探査が国際協力で行われる場合でも、米ロ中に引けを取らない有人技術を持たないと、ISSのように米国の宇宙計画の変更に振り回されかねないことを肝に銘じておくべきだ。
有人探査は無人探査よりもはるかに高い技術的信頼性が求められ、単純に無人探査の延長線上にないことも忘れてはならない。
わが国が将来、どのように独自の有人探査を行うかを真剣に議論する時期が来ている。その実現に必要な技術開発、資金計画を周到に練るとともに、何よりも国民の理解を得なければならない。
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