東京都港区の公社マンションで2006年、都立高2年の男子生徒がエレベーターに挟まれて死亡した事故で、東京地検は業務上過失致死罪で製造元の「シンドラーエレベータ」の元東京支社保守部長ら2人を含む計5人を在宅起訴した。
当初は構造上の欠陥はないとして、シンドラー社の立件は困難とみられていたが、警察はシンドラー社が事故より以前に不具合情報を察知していたのに、他の業者に点検業務を引き継ぐ際、情報を伝えていなかったことを重視して書類送検した。検察も警察と同様に関係者の責任を厳格に判断し、当時の担当者の立件に踏み切った。
シンドラー社以外では、保守点検方法について十分に把握しないまま現場に保守点検させたとして、事故当時の保守点検会社「エス・イー・シーエレベーター」の社長ら3人が在宅起訴された。
現代社会でエレベーターは欠かせなくなっており、公共性の高い存在だ。安全に利用できるよう万全の管理が求められる。しかし、保守点検業界はメーカーの系列業者と点検専門の独立系業者がシェア獲得をめぐって対立しているという。
国土交通省が5月に実施した業界のアンケートによると、エレベーターの不具合情報について、シンドラー社など主要メーカー6社は、エス・イー・シーエレベーターなど独立系業者に伝えていないと回答している。事故から丸3年たつが、業界は不具合情報の引き継ぎのルール作りなど再発防止策を打ち出せていないのが現状だ。
日常的に利用されているエレベーターの安全管理の課題を浮き彫りにした今回の事故。踏み込んだ起訴は、業界全体に安全対策への取り組みを最優先するよう迫るものといえよう。