HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 22 Jul 2009 00:19:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:政権交代か否か 衆院解散 8・30総選挙へ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

政権交代か否か 衆院解散 8・30総選挙へ

2009年7月22日

 衆院が解散され8・30決戦へ事実上の選挙戦に入った。四代の自公政権の実績が問われる。国民にチェンジを求める声がある。焦点は政権交代か否かだ。

 気のせいだろうか。自民党席は半ばやけ気味、民主党側は笑みのこぼれる「万歳」に映った。

 戦後初の真夏の八月総選挙へ、候補者たちは全国へ散った。

 自民総裁の麻生太郎首相は党会合で、混乱を極めた自らの政権運営を謝罪。決戦前に辛うじて「一致団結」を演出した。民主の鳩山由紀夫代表は「革命的な総選挙だ」と決意表明した。

 政権交代が現実味を帯びている。「歴史的決戦」と銘打たれるゆえんかもしれない。

 小選挙区制度の「必然」

 前回二〇〇五年総選挙では、郵政民営化を唯一の争点にした小泉政権の劇場型手法が奏功し、自民は公明党も合わせて衆院勢力三分の二を超える圧勝を果たした。

 あれから四年。各種世論調査では、比例代表の投票予定先で、民主が自民を大差で圧倒する、かつてない現象が起きている。

 自公政治への忌避の空気に「政権交代」の旗を掲げる民主が後押しされる格好だ。郵政選挙から攻守ところを変えたといえる。

 追い風を受けると、思いも寄らない地滑り的勝利をもたらす。オセロ風ゲームのように。それが一人の当選者を決める小選挙区制の醍醐味(だいごみ)であり、怖さでもある。

 一九九六年に小選挙区比例代表並立制の総選挙が導入されて十三年。前回の自民圧勝劇と同様の結果が続いて起きるとしたら、それは制度がもたらす「必然」とも言えるのではないだろうか。

 長年政権の座にあった自民にすれば信じ難い展開に違いない。閣僚が発した「最悪のタイミング」との声が深刻度を如実に示す。

 争点は山のようにある

 「政権交代」の四文字が全国の選挙区で浸透しているのは、否定のしようがない。ただ、政権の選択は政策の選択でもあることを確認したい。争点は山ほどある。

 時代の転換点を思わせる荒波がいや応なく押し寄せている。

 加速が止まらない少子高齢化と光の見えぬ雇用情勢。外にはオバマ米政権誕生後の世界新秩序づくりの胎動。地球温暖化対策も喫緊の課題だ。

 どのような時代認識に立ち、どんな処方せんを講じるのか、各党はマニフェスト(政権公約)で明確に打ち出すべきだ。その答えは私たちが暮らす将来の国のかたちを示すことになるだろう。

 要は予算配分のあり方を変えるかどうかが争点なのだ。

 年金、医療、介護の社会保障政策や景気対策、格差是正などに世論の関心が高い。

 経済一本に絞ってきたという麻生自民は「安心と活力のある社会」づくりを掲げる。民主は「国民の生活が第一」と子ども手当や高速道路無料化を打ち出す。

 選挙目当てのバラマキならば、有権者に見透かされよう。

 自民は景気回復後に消費増税するという。党内には異論もある。合意事項なのか。バラバラの公約で有権者を欺くなら論外である。

 民主は税金の無駄遣い削減などで約十七兆円の財源を生み出すという。優先順位のつけ方次第で、しわ寄せが及ぶ分野も出よう。厳しい財政事情の下、四年間消費増税しないとの方針に裏付けはあるか。丁寧な説明が欠かせない。

 安保外交政策では、民主首脳は対米関係に配慮して、インド洋での自衛隊給油活動について即時撤収せず、当面は継続する、と軌道修正を示唆している。自衛隊海外派遣問題では社民党との関係も懸念材料だ。

 政権が近づけば現実路線へ傾斜する民主へ厳しい視線が注がれる。「政権党」の宿命でもある。

 何より、民主は政権を担当する力量があるのか、自民とどこが違うのか、有権者の不安や疑問を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。脱・官僚主導の政権構想もいまひとつ伝わらない。明確な青写真が必要だ。

 自民にしても、迷走続きの惨状が政権担当能力を疑わせた。弱体化する党の基盤をどう立て直すのか。あわせて小泉、安倍、福田、麻生と四代続いた「世襲政治家」政権の総括を、いいかげんに済ませてはなるまい。

 公明は低迷する自民との距離感に悩んでいる。共産、社民、国民新などの野党は存在感をどうアピールするかが課題となる。

 マニフェスト早く示せ

 政権選択の選挙戦は、お盆休みを挟んでの、四十日間の異例の長期戦となる。

 間延び感に流されず、全政党の政策をじっくり吟味したい。マニフェストを早急にまとめて判断材料を提示するよう政権を争う自民、民主に求める。歴史的一票を投じる有権者が待ち望んでいる。

 

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