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夏休みで行楽の車が増える季節になった。乗用車に乗っている身から見ると、隣を走るビルのようなトレーラーに息が詰まることがある。
名古屋市のS字カーブでは、トレーラーがバランスを崩して転倒し、乗用車の母娘がコンテナの下敷きになって死亡する事故が5月にあった。大阪では、重さ22トンのコンテナが対向車線に転がり出て6人がけがをした。
01年以降でみると、トレーラー事故は約220件あり、横転やコンテナの転落といった重大事故が目立つ。
日本では毎日、数万台のトレーラーが公道を走っている。コンテナの重さは20〜30トン。それを載せた巨大な台車を牽引(けんいん)する構造は不安定だ。しかし、危ないのはそのせいだけではない。
トラックやダンプカーと異なり、コンテナは封印されている。盗難防止や秘密保持には好都合だが、中が見えないので安全が確認しにくい。
このため、中の荷物が偏っていたり、過積載だったりしてもわからない。荷物を出し入れしやすいように床に油が塗ってあったため、カーブで積み荷の墓石が滑って車ごと倒れたこともあった。
積み荷をしっかり固定する、というのは当然のルールだが、途上国発のコンテナには危険な例があるという。
運転手が走行中、異常に気づくことがあるが、この業界は中小零細企業が多い。荷主に連絡して扉を開けて積み直してくれ、とはいいにくいという。
コンテナは米国発の物流方法だ。海運と陸送を直結し、輸送の効率を飛躍的に高めた。いまや輸出入貨物の9割以上を占める。
だが、60年代に日本に導入されたとき、関係者はとまどった。米国と異なり、道路は狭いし、カーブも多い。橋の強度も足りない。それでも関係法をゆるめ、許可した道路に限って走行を認めてきた。
国土交通省が中心になり05年、包括的な安全輸送ガイドラインをつくってはいるが、強制力はない。
米国にも過積載の場合、荷主の責任を問う法律がある。自民、民主両党は、運転手への情報提供を荷主らに義務づける法案を協議したが、罰則をもうけるかどうかで一致せず、国会提出が見送られている。早く実効性のある法律をつくるべきだ。
いますぐできることもある。港にはコンテナの重さを量ったり、エックス線で中を調べたりする装置がある。船のバランス維持や密輸、テロ対策用だが、国内の安全対策に援用できないか。トレーラーの速度制限も検討していい。横転する速度を事前に計算して伝える装置を提案する学者もいる。
安全第一は運転手の義務だ。しかし事故が起きたときに運転手の責任を問うだけでは、次の事故は防げない。
新生銀行とあおぞら銀行が来年10月に合併する。総資産は18兆円で国内6位になる。「メガバンクでも地域金融機関でもない、日本の経済社会に役立つ新しい銀行をめざす」という。
だが、両行首脳の口からは「どうやって収益を上げるか」の青写真が出てこない。今後1年かけて考えるというのでは、心もとない。
五里霧中の現状は、「歴史的な役割を終えた長期信用銀行に代わる新しいモデルをどうつくるか」という問いに今も答えが出ていないことを物語る。
両行の前身は日本長期信用銀行と日本債券信用銀行。ともに金融債を地方の金融機関や富裕な個人に売り、集めた資金を産業界の設備投資向けに長期融資するのが使命だった。
だが、高度成長期が終わり、低成長期に入ると借り手が減り始める。これを補おうと不動産融資などに走ったが、バブル崩壊の直撃を受け、両行とも98年に破綻(はたん)。一時国有化された。
00年に再民営化され、現在の大株主はともに米投資会社。国の公的資金も合わせてざっと4千億円残っている。
新生銀は個人向け業務や消費者金融の子会社化で殻を破ろうとした。あおぞら銀は不動産融資や企業再生業務に力を入れた。だが、次第にサブプライム関連など海外への投資が増えていった。大株主の意向で経営陣がくるくる代わり、目先の利益に目がくらんだ。これがリーマン・ショックで暗転。両行とも巨額の損失を負った。
新生銀の八城政基社長もあおぞら銀のB・プリンス社長も経営失敗を素直に認める。自己資本比率はそれぞれ8.35%、11.6%とまだ規制水準を上回る。「今のうちに合併すれば一から出直せる」と踏んだらしい。
過去への反省から、新銀行は預金を持てあます地方の金融機関との連携に活路を求める。資金運用や企業融資などで高度なノウハウを提供することで共存共栄を図る考えだ。トップには一時国有化された足利銀行を立て直した実績があり、地方の金融機関の実情にも精通する池田憲人氏が就く。
旧長信銀に蓄えられた能力を振り替え、同時に地方に根を張る金融網全体の機能もアップする。そんな一石二鳥ができるなら歓迎すべきことだ。日本の金融界には新しいことを始めようという気概がなさすぎるからだ。
しかし、「銀行は余っている」といわれ、経営環境は厳しい。まずは、両行の株主、経営陣、現場の社員のすべてが一から出直し、あらゆる可能性を探るしかない。
久々の本格的再編劇とあって、金融庁は合併を高く評価しているという。だが、公的資金の安易な追加は禁物である。両行には、今ある公的資金の枠内で自己革新を遂げるよう、厳しく監督・指導していくべきだ。