国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会が、北朝鮮の核・ミサイル開発を担当する政府高官ら5人を渡航禁止対象者に指定した。国連による北朝鮮の個人に対する渡航禁止措置は初めてで、核・ミサイル拡散の封じ込めには意義があろう。
指定は、北朝鮮による5月の2回目の核実験後に採択された安保理決議に基づく措置だ。委員会は4月に資産凍結対象として核・ミサイル開発に関与した貿易会社など3団体を指定したが、安保理決議は北朝鮮の再核実験を受けて委員会に追加指定を求めていた。
委員会は、政府高官らの渡航禁止措置だけでなく、資産凍結でも平壌の核関連企業「南川江貿易」など5団体を指定した。指定団体は計8団体となった。
渡航禁止措置を受けたのは原子力総局の李済善総局長らのほか、長年核関連の部品調達などに暗躍し、北朝鮮の核開発の黒幕といわれる南川江貿易幹部のユン・ホジン氏も含まれる。李総局長らは、国外の資産も凍結される。
北朝鮮の核・ミサイル開発をあきらめさせるには、海外と人やモノ、カネの流れを遮断させる必要がある。国連による圧力強化を実効性あるものにしなければならない。懸念は、核兵器開発の野心を持つとされるイランやシリアとの間で技術者や科学者を往来させ、情報交換などを行っていることだ。両国が制裁を無視する可能性もある。北朝鮮の友好国である中国やロシアの協力も不透明とされる。
国連の制裁強化に北朝鮮の反発は必至だ。離脱を表明した6カ国協議についても、復帰する考えはないと強調する。国際社会は圧力を強めながら協議への復帰を促す戦略が重要になろう。北朝鮮を追い詰めず、対話を探らなければなるまい。