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天声人語

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2009年7月19日(日)付

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 悪天下に河原でキャンプをしていた十数人が増水した川に流される惨事が、10年前の夏休みにあった。そのとき小紙夕刊のコラム「窓」に、航空界で語り継がれてきた「臆病者(おくびょうもの)」の話を書いたのを、北海道・大雪山系での遭難を聞いて思い出した▼1966年、日本の空は大事故が相次いだ。3月にはカナダの旅客機が濃霧の羽田への着陸に失敗して炎上し、64人が犠牲になった。その事故の直前に、羽田への着陸を断念して福岡に向かった日航機があった▼ハワイから飛んできた瀬戸号である。降りるにはぎりぎりの気象だった。2度着陸を試みたが滑走路がよく見えない。安全に自信の持てなかった機長は行き先を変更する。東京を目の前にしての事態に、乗客からは落胆の声が上がったそうだ▼福岡での入国手続きが手間取ったために不満は募った。だが、機内で待たされてロビーに出た乗客はそこで、炎上するカナダ機のテレビ映像を目にする。不満は一転して機長への感謝に変わっていったという▼そして、「臆病者と言われる勇気を持て」という格言が航空界に広まっていった。人間や、人間の造った文明をひねりつぶすことなど、自然には造作もない。空に限らず海でも山でも、謙虚な勇気が必要な時は少なくないはずだ▼あすの「海の日」へ続く連休で、今年も夏休みシーズンの幕が開いた。北海道の遭難は悪天をついての強行が大きな原因と聞く。今年だめでも山は逃げず、海も逃げない。臆病なほど相手の機嫌をうかがう構えが、自然との遊びには肝要である。

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