HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 56229 Content-Type: text/html ETag: "f4cb6-119d-4cb1d200" Expires: Sat, 18 Jul 2009 03:21:12 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 18 Jul 2009 03:21:12 GMT Connection: close 7月18日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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7月18日付 編集手帳

 詩歌の読み方は人によってさまざまだろう。「五行歌秀歌集」(市井社)で出合った一首がある。〈思い出に/殺されながら/生きてゆく/君といた日は/輝くナイフだ 桜井匠馬〉◆若い人には失恋の歌かも知れない。情熱の季節を通り過ぎた身には、子を亡くした親の叫びを聴いている心地がする。犯罪被害者の遺族とは、思い出に殺されながら生きる人たちだろう◆犯人は、時効まで何年、あと何年…と「引き算」で生きる。遺族は、あの子がいれば今年は小学生、もう中学生…と、「足し算」で生きる。ゴールのある引き算と違い、足し算に終わりはない。遺族にとって時効は、逃げおおせた犯人に贈る理不尽な“ご褒美”と映ろう◆法務省の勉強会が、殺人など重い罪の時効を廃止する方針を最終報告にまとめた。事件から日がたつほど物証や目撃証言は集めにくく、時効廃止が冤罪(えんざい)につながるのを懸念する声もあり、議論はまだ扉の入り口である◆肉親を殺され、思い出にも殺されて生きる人が、時効の成立でもう一度殺されるのは見るに忍びない。扉の入り口から奥へ、現実へ、橋をわたす知恵が要る。

2009年7月18日01時29分  読売新聞)
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