HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 18 Jul 2009 02:18:47 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:大雪山系遭難 ツアー登山に潜む不安:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

大雪山系遭難 ツアー登山に潜む不安

2009年7月18日

 北海道・大雪山系で遭難事故が相次ぎ、ツアー登山の参加者ら多数が死亡した。中高年の、しかも国内とはいえ高緯度地方のツアー登山は、細心の準備と注意がないと、悲劇は避けられない。

 事故当時の大雪山系は、悪天候で風雨が強かった。その中で遭難したパーティーは、いずれも六十代が中心を占める。

 約二十年前から、わが国の中高年層の間で、登山が静かなブームとなったのは周知のとおりだ。それとともに、中高年の遭難者も増えている。

 警察庁の調べでは、昨年の山岳遭難事故は過去最悪だったが、遭難者の81%、死者・行方不明者の91%は四十歳以上で、とくに六十代が目立つ。今回の事故はその縮図といえないか。

 登山は人間の体力、周辺の地形や環境への細心の注意、決断力、登攀(とうはん)の技術とメンバー同士の協力などが必要なスポーツである。時には人間の能力を極限まで発揮しなければならない。

 それだけに、パーティー全体と個々のメンバーの能力の限界を十分知ったうえで、登山の計画や具体的な行動を決めることが大切だろう。六十代ともなれば個々の動作も、気温の変化などへの耐久力も二十〜三十代とは違う。この点をまず自覚したい。

 遭難した登山者は東海、中国、関東地方などの人々だが、現地の気象や地形などの条件をどれほどつかんでいただろうか。

 本州に比べて北海道は緯度が高く、同じ季節でも寒冷で夏山と思えないほど山系に雪が残る。そのうえ雨が降り、岩を飛ばす強い風が吹き、コース途中に避難できる山小屋も少ないとなれば、年配の人でなくても体温が低下し、脱落者が出ても不思議ではない。

 遭難した二パーティーは、旅行会社の募集したものだった。会社によっては、参加者の体調に注意を求めたり、現地のガイドが加わったりしたが、それにしては残念な結果である。

 北海道警は業務上過失致死の疑いで捜査を始めた。ツアー登山は安全、便利で人気があるという。だが、多くの人命を預かる以上、安全を最優先に、現地の気象など最新の情報を収集のうえ、余裕のある日程を組み、実施すべきではないか。

 また専門的な知識や経験を持つガイドなら、参加者に先立って危険を察知してほしい。出発を中止したり、中途で引き返す勇気は常に必要だ。

 

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