禅と茶。日本が世界に誇るこの二つの文化をわが国にもたらしたのは、たった一人の日本人だ。僧・栄西(1141〜1215年)。現在の岡山市に生まれた日本臨済宗の開祖である。
鎌倉新仏教の旗手の中にあって、栄西のバイタリティーは抜きん出ている。宋に渡航すること2度。旧仏教側からの弾圧に屈せず、時の権力者・北条氏一門の庇護(ひご)を受けて鎌倉に寿福寺を、そして京都に自分の夢を結実させる寺を創建した。建仁寺だ。
ゆかりの文化遺産を集めた「特別展建仁寺―高台寺・圓徳院・備中足守藩主木下家の名宝とともに」が、きのう岡山市北区天神町の県立美術館で開幕した。約800年の歴史の結晶115件(国宝・重要文化財16件)を展観する。
海北友松の「雲龍図」。大画面の水墨画の迫力に圧倒される。長谷川等伯の絢爛(けんらん)たる襖(ふすま)絵、白隠や仙〓ら名僧の禅機にあふれた書画が並ぶ。伊藤若冲の「雪梅雄鶏図」の細密さと色彩には驚くばかりだ。
もう一人の主役は、豊臣秀吉の正室ねねの実家である木下家。建仁寺と深い縁で結ばれている。秀吉夫妻の肖像や遺愛の品、自筆書状からは肉声が聞こえる心地がする。
会期は8月23日まで。同17日から会期末までの一週間は国宝の中の国宝、俵屋宗達の「風神雷神図」が登場する。楽しみだ。
(注)〓は「がんだれ」に「圭」