三重県伊勢市で開かれていた全国知事会議は、衆院選に向けて与野党が公表する地方分権改革についてのマニフェスト(政権公約)を採点、公表することや、国直轄公共事業費の地方負担金の一部支払い拒否などの方針を決めた。
橋下徹大阪府知事や東国原英夫宮崎県知事が提案していた特定政党への支持表明は見送られたが、国に対して強い姿勢でメッセージを送ったことは一歩前進であり、評価できる。
小泉内閣時代に初めて会長選挙を導入した全国知事会は、サロン的な親ぼく・陳情団体から「闘う知事会」に変ぼうしたといわれたが、今後さらに中央政府に対して「もの言う知事会」としての期待を抱かせるものともいえよう。
自民、公明、民主3党が今後公表するマニフェストの評価については、知事会の政権公約評価特別委員会(委員長・古川康佐賀県知事)で、採点する際の8項目の評価基準を定めた。
100点満点のうち、配点の最高は国と地方の協議機関の法制化の30点。国の出先機関の縮小・廃止など7項目を各10点とし、6人の委員会メンバーと希望する知事が採点するとした。
知事会は2007年の前回参院選でも同様の採点をしたが、議論をリードしてきた橋下大阪府知事が「同じ評価でも、機が熟しているかどうかで全然変わってくる」と言うように、国民注視の中で地方分権というテーマをどう盛り込むかは、各党にとってプレッシャーになろう。
国直轄公共事業費の地方負担金問題では、国の出先機関の庁舎整備費や職員の退職手当などの負担分が廃止されない場合、こうした負担分を含む事務費と人件費の負担金について09年度分の支払い拒否も辞さない方針で一致した。
このうち人件費に含まれる退職金については先月、金子一義国土交通相が廃止を表明したが、廃止時期は未定で、庁舎整備費の見直しについても国交省は否定的だ。公共事業削減を懸念する声が出る中で、知事会議は何とか強硬姿勢で結束することでまとまったといえる。
だが、今回の「成果」は、タレント知事2人の発信効果によるものが大きい。政権公約の採点が各党に影響を与え得るのも、衆院選間近なればこそだ。負担金の問題も、廃止で終わりというわけにはいくまい。国と地方が対等の関係で意見交換する分権国家をつくるためには、地方側もより具体的な提言能力を鍛える努力が必要だ。