農林水産省職員の「ヤミ専従」問題について調査していた同省の第三者委員会は、無許可での組合活動が常態化していた職員が198人に上るなどとする調査結果をまとめ、石破茂農相に報告した。
報告書によると、1日4時間以上組合活動に従事することが年間30日以上あった「無許可専従」が97人、4時間未満の活動が30日以上という「準無許可専従」は101人だった。また、上司ら945人が違法性を知りながら黙認していたと指摘した。農水省は退職者を除く約550人を処分する方針だ。
ヤミ専従問題の発端は、昨年3月に人事院に寄せられた情報だった。農水省は、同5月に総務省が全省庁を対象に調査した際、142人に疑いがあることを把握しながら「ゼロ」と回答。今年3月に報道で発覚するまで関係文書の改ざんなどで事実関係を隠ぺいしていた。こうした状況を受け、石破農相の指示で弁護士など8人からなる第三者委を設け、4月から職員への聞き取りなどで実態の解明を進めてきた。
調査結果は国家公務員法で禁じられているヤミ専従が、省内に深く根を張っている状況をあらためて浮き彫りにした。公務員意識や順法精神の欠如はもちろん、労使の過度のもたれ合い、隠ぺい体質などが違法行為の温床になってきたといえよう。双方の責任は重い。
日本の農業は重大な岐路に立っており、抜本的改革が求められている。それを推進すべき農水省がこのありさまでは情けない限りだ。ヤミ専従の問題以外にも不祥事が相次いだ。地に落ちた信頼を回復するためには、不適切な行為に厳正に対処するとともに、透明性や自浄能力を高め、ゼロから出直さなければならない。