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社説2 時効廃止への詰めを急げ(7/18)

 法務省が殺人など重大・凶悪事件の公訴時効を廃止する方針を打ち出した。日本では明治時代に刑事訴訟に関する法律が整備されて以来、ずっと時効が設けられてきた。廃止は政策の大きな転換になる。

 この問題は今後、法制審議会(法相の諮問機関)に諮られる。さまざまな課題はあるが、法改正に向け詰めの議論を急ぐよう求めたい。

 犯罪後一定期間が過ぎれば裁判で罪に問われることがなくなる。これが公訴時効だ。日本ではいま、最高刑が死刑にあたる殺人などの場合の25年が最長である。

 時間がたつと証拠が散逸し公正な裁判を行うことが難しくなる。被害者や遺族の犯人に対する処罰感情も薄れてくる。時効を設ける主な理由はそう説明されてきた。

 事件を捜査し罪を罰するのは被害者や遺族の報復の気持ちを満たすためでなく、国が自ら法秩序を守り回復させるためである。事件から長期間経過して社会全体の記憶が薄れ、法秩序回復の意味も小さくなったと判断すれば、国は捜査、裁判を放棄する権限も持っている。時効制度の背景にはこうした考え方もある。

 しかし近年、刑事司法の仕組みは被害者の権利や心情を重んじる方向に動いている。2005年には犯罪被害者等基本法が施行され、昨年末には裁判への被害者参加制度も始まった。法務省が勉強会で年初から時効見直しの検討を進めてきたのも、重大犯罪の時効廃止を求める被害者や遺族の声を受けてのことである。

 被害者や遺族は「犯人への処罰感情が薄れることはない」と訴えている。一般にも「時効廃止」に賛成する意見が多いこと、捜査技術が進んでいることも考慮すれば、時効を設ける根拠は弱くなってきている。

 時効を廃止する重大・凶悪犯罪の対象を具体的にどう決めるかは今後の課題だ。すでに起きて時効が進んでいる事件に新たな制度を適用すべきかどうかも、見解が分かれるだろう。時効がなくなれば扱う事件が増え、捜査当局の負担が重くなるという問題もある。

 法務省もこうした点は今後十分な検討が必要だとしている。議論を尽くすためにも、法相は早期に法制審に諮問してほしい。

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