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天声人語

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2009年7月18日(土)付

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 平安期の歴史書に皆既日食の記述がある。〈墨の色のように光なく、鳥の群れが乱れ飛び、多くの星が現れる〉。都人を驚かせた朝の異変は975年8月10日、太陽は午前7時45分8秒から完全に隠れたと、今の科学が突き止めている▼そんな話題を『完全ガイド皆既日食』(朝日新聞出版)で紹介した武部俊一さんは、皆既の愉悦を「天と地と人の一体感」とする。「宇宙の中にいる自分をこれほど実感させてくれるものはない」▼21世紀で最長、約6分半の皆既食が4日後、南西諸島などで起きる。日本の陸地から拝めるのは46年ぶり、次は26年先とあって、島々に渡る「観測客」は2万人を超すとみられる。この週末から天気図が気になろう▼99年夏の皆既食をフランスで見た。「日食渋滞」の中、トイレを我慢して車で皆既帯に滑り込んだ。草原を貫く道に停車してほどなく、ゴーと音がするように暗くなった。鳥が飛び立ち、雲間から黒い太陽がのぞく。神々しい天の消灯。闇に甘えて用を足した▼月の400倍の直径を持つ太陽が、約400倍のかなたにある。この奇跡が二つの球体の見かけの大きさをそろえ、月が日にぴたりと重なる時が巡り来る。創造主からの贈り物と言われるゆえんだ▼こざかしい性善説、性悪説の及ばない大宇宙の営みである。一方に、ちっぽけな人間がいる。この生き物、自由にならぬものはないと勘違いし、理性を忘れて破壊に浪費、やりたい放題。主はたまに昼の光を奪い、小さな星の支配者を戒めるのだろう。効き目のほどは知らない。

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