全国の児童相談所が受け付ける虐待相談件数が増え続けている。厚生労働省の集計によると、2008年度は過去最多の4万2662件(速報値)で、初めて4万件を超えた前年度を2023件上回った。
集計を始めた1990年度(1101件)から18年連続の増加となった。厚労省は改正児童虐待防止法の施行などを通じ、国民の意識が高まってきたことが背景にあると分析する。
確かに社会全体が児童虐待に敏感になって相談が増えた面はあろうが、虐待の広がりに歯止めがかからない実情を物語っている。憂慮すべき事態である。
虐待で摘発される事件も後を絶たない。原因は核家族化による社会からの孤立や経済状況の悪化、保護者の育児力低下などさまざまな要素が複雑に絡んでいるといわれる。
虐待を防ぐには、兆候を見逃さないよう児童相談所や学校、保育園、地域社会、警察などが連携を密にする必要がある。早期発見と迅速な対応が不可欠だが、根絶は容易ではない。
全国的に児童相談所への相談が増え続ける中、逆に相談が減少した地域がある。都道府県・政令市別にみると、08年度では広島市、三重県などが前年度に比べ20%以上減っている。原因を詳しく分析し、参考になることがあれば公表し対策に生かしてもらいたい。
08年度から相談所の調査を拒否する家庭への強制立ち入り制度が導入されたが、初年度の実施件数は2件だった。
鍵を壊してでも住居に入る強行策だけに、まだ現場にためらいが強いとされる。対応するための人員や専門知識の不足も指摘される。子どもの安全確保のために必要な措置である。現場の意識改革や環境整備が早急に求められる。