HTTP/1.0 200 OK Age: 175 Accept-Ranges: bytes Date: Thu, 16 Jul 2009 21:18:15 GMT Content-Length: 7657 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Wed, 15 Jul 2009 14:28:45 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

春秋(7/16)

 江戸時代、太平の世の旗本御家人に基本作法や心得を説いた「武備目睫(ぶびまつげ)」と題する書があった。奥義や秘伝はすぐそこにあるが、まつげのようにその存在に気づかない、という意味のことわざ「秘事はまつげ」に由来した書名だという。

▼なかにこんな趣旨の一節がある。「町人が色に溺(おぼ)れるごとく、道に溺れ義と心中してもいいという思いを日夜朝暮に忘れてはならない」。町人ばかりが色恋やら心中沙汰(ざた)やらの担い手だったとも思えぬが、女性を愛するように道義を慈しむ、とは徳川将軍家に仕える若侍に分かりやすい表現だったのかもしれない。

▼さて、彼らが溺れたのは色恋でもなかろうし、もちろん道義でもない。農林水産省にヤミ専従の常習職員が198人いたという第三者委員会の調査報告書が出た。人事・労務担当者や直属の上司ら945人にも責任があるのだという。組織丸ごと労使慣行という名のぬるま湯にいい気分で溺れきっていたのだろう。

▼「まつげを濡(ぬ)らす」はだまされないよう用心するという意味、「まつげを読まれる」ならだまされるという意味だ。農水省には去年、ヤミ専従ゼロとの発表にまんまとまつげを読まれたことがある。今週にも大量処分を行うというが、果たして道に溺れる覚悟があるのか。今度はしっかりとまつげを濡らしておく。

社説・春秋記事一覧