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混迷自民党―逃げずに逆風に向かえ

 自民党が混迷の度を深めている。

 中川秀直元幹事長らが、党大会に次ぐ議決機関である両院議員総会を開くよう求める130人以上の署名を執行部に突きつけた。麻生内閣の事実上の副総理格である与謝野財務相ら2人の閣僚も含まれている。

 首相や執行部は大揺れである。

 総会を開けば、中川氏らは党総裁選を前倒し実施するための党則改正を求める構えだ。それが通れば、首相退陣の流れは決定的になる。

 かといって、総会の開催要求を拒否すれば「麻生おろし」の火がさらに燃え広がるのは避けられない。党分裂の可能性さえ否定できない局面だ。

 署名した全員が強硬な「麻生おろし」論者というわけではない。「地方選挙と国政は別」と責任を取ろうとしない首相に、きちんと反省の弁を語ってほしいという議員もいる。

 混乱を避けようと、派閥の有力者らが署名切り崩しに動くなど、情勢は流動的だ。場合によっては、首相がいったん決断した「21日にも衆院解散、8月30日投開票」の総選挙日程が思い通りにいかなくなる可能性もある。

 もとはといえば、この混乱の最大の原因は、東京都議選の翌日に首相自身が打ち出した奇策にあった。

 都議選に敗れても、解散の日程を固めてしまえば党内は一気に選挙に動き出し、「麻生おろし」を封じ込めることができる。それが異例の「解散予告」の狙いだった。

 だが、都議選の歴史的な大敗は、自民党に吹きつける逆風のすさまじさを見せつけた。議員たちは自らの落選、党の敗北への恐怖をひしひしと感じたに違いない。なのに「麻生おろし」封じにひた走る首相。そんな受け止めが批判の火に油を注ぐ結果を招いた。

 首相や執行部に言っておきたい。党の議員総会を怖がっていて、どうして総選挙で野党と戦うことができるのか。この騒ぎを見守る国民の多くが、党内で噴き上げた批判にたじろぐ首相の姿にあきれている。

 これだけ不人気の首相の下ではとても選挙は戦えないという、議員たちの危機感も分からないではない。だが、だからといって政権を投げ出した安倍、福田両元首相に続いて麻生氏も1年足らずでクビにし、4人目を据えたところで、自民党の勢力挽回(ばんかい)にどれほどの効果があることか。

 それでも、どうしてもカオを替えたいという議員が多いのなら、総裁選をして決着させればいい。そのことも含めて、有権者が総選挙で審判を下す。

 心配なのは、民主党との真剣勝負が始まる前に、自民党が内部崩壊してしまいかねないことだ。有権者は、政権選択選挙での自民、民主両党の堂々たる論戦を聞きたいはずだ。結束して逆風に立ち向かう勇気を期待する。

待機児童急増―母が安心して働ける国を

 認可保育園に申し込んでも入れない待機児童が、都市部で急増している。東京23区と政令指定市、中核市などの4月初めの数字を朝日新聞が集計したところ、昨春に比べて3割増だった。不況で働きに出る専業主婦が増えたことが影響しているようだ。

 優先度が高いフルタイムの共働きやひとり親家庭の子どもでも、入園できない例が相次ぐ。親が求職中の場合はさらに難しい。「預け先がなく就職できない」「育休から復帰できない」と、母親の悲鳴が聞こえる。

 これでは少子化に歯止めを掛けることなど、とうてい望めない。緊急の対策が必要だ。

 まず、いまあるものを工夫して使おう。小中学校の空き教室や公民館、賃貸住宅を利用して認可保育園の「分園」をつくることもできる。

 保育士や看護師の資格を持つ人が、保育園と連携して自宅などで子どもを預かる「保育ママ」もあるが、普及していない。政府は、資格がなくとも一定の研修を受けた人も預かれるようにして大幅増を狙う。保育園の手厚い支援があれば親も安心できるだろう。

 政府の「安心こども基金」は、賃貸住宅につくる分園も補助対象にしている。ただ11年度以降も補助が続くかどうかは不明で、継続が必要だ。

 保育園より定員に余裕がある幼稚園も活用すべきだ。幼稚園と保育園を一緒にした「認定こども園」の整備は遅れている。文部科学省と厚生労働省の所管の壁を崩していきたい。

 中長期的な対策も忘れてはいけない。共働きの増加などでこれからも保育ニーズは高まる一方だろう。

 保育園児はこの10年で2割増えた。0〜5歳児の保育の定員はいま200万人だが、政府は今後10年であと100万人分が必要と試算する。だが、確保された財源はこども基金の15万人分。残りの整備費や年5千億円以上の追加がいる公費負担の見通しはない。

 保育士も増やさないといけない。収入が全産業平均の7割程度という待遇を抜本的に改善することが不可欠だ。

 若い夫婦が住む地域には保育ニーズが発生する。大規模なマンションを開発する事業者に、自治体が保育園設置を求めることも検討されていい。

 90年代半ばから出生率が回復したフランスでは、その数年前から保育サービスを大幅に拡充し、仕事と子育ての両立を支援した。いまだに出産を機に7割の女性が仕事を辞める日本とは大きく状況が違う。安心して産める環境づくりが大切だ。

 年約89兆円の社会保障給付のうち高齢者対策は7割、子ども対策は3%余りに過ぎない。小渕少子化担当相が率いるプロジェクトチームは先月、「消費税1%分」を子ども対策のため追加を、と提言した。聞くべき指摘だ。

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