HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 57681 Content-Type: text/html ETag: "15e687-15cb-c9a051c0" Expires: Tue, 14 Jul 2009 22:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 14 Jul 2009 22:21:10 GMT Connection: close 改正臓器移植法 命のリレーを増やすために : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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改正臓器移植法 命のリレーを増やすために(7月15日付・読売社説)

 移植医療は海外に頼ることなく国内で完結させるべきだ、との判断を多くの国会議員が共有したのだろう。

 改正臓器移植法が参院で可決・成立した。公布から1年後に施行される。

 共産党以外は党議拘束せず、議員が自らの意思で投票した結果、衆院を通過した改正案に対する賛成が138票で、反対82票を大きく上回った。賛成の比率は衆院と同様に6割を超えた。

 解散・総選挙が近づく中で、慌ただしく採決された印象は否めない。だが、ぎりぎりの政治日程をにらみつつ、臓器移植問題は結論を先送りできない、という切実な思いが強かったと見るべきだ。

 成立した改正移植法は、臓器提供のルールを世界保健機関(WHO)の指針や主要各国の移植法とほぼ同じ条件にし、国内での移植の道を広げるものだ。

 現行法が本人の臓器提供意思を移植の絶対条件としているのに対し、改正法は、脳死した本人の意思が分からない場合は家族の判断に委ねる。無論、脳死判定自体を拒否することもできる。

 家族の同意により移植できることで、臓器提供の可能性が増すだろう。本人が意思表示できない乳幼児や、15歳未満からの移植が国内でも可能になる。

 読売新聞が改正案の参院審議に合わせて行った世論調査では、本人の意思が不明の場合は家族の同意でよいとする人が62%、15歳未満からの臓器提供を認めることに賛成する人が74%に上った。

 国民の理解が次第に進んできたことが、改正移植法の成立を後押ししたとも言えよう。

 だが、実際に命のリレーを増やすためには、施行までに取り組むべき課題が山積している。

 小児の脳死判定は難しい。大人よりも一段と厳格な判定基準が要る。虐待で脳死となった子の臓器が虐待した親の承諾で提供される悲劇が起きないように、監視体制を整えることも欠かせない。

 臓器提供を承諾した家族の心のケアを担う移植コーディネーターも拡充すべきだ。脳死に近い容体になった時に、移植優先で治療が尽くされないのではないか、との疑念を持たれぬように、救急医療も充実しなければならない。

 死生観の絡む問題だけに、臓器移植法には不断の検証と議論が必要だ。現行法は3年後の見直し規定があったにもかかわらず、事実上12年近く手つかずだった。国会は生命倫理問題に真正面から取り組んでいくべきだろう。

2009年7月15日01時18分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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