自民党の混乱が止まらない。東京都議選惨敗の責任を取ると言って選対責任者らが突然辞意表明した。反麻生勢力の退陣要求も依然続く。醜態はもうたくさんだ。政権党の矜持(きょうじ)はどこにいったのか。
都議選で惨敗した自民党の動揺が次々に表面化している。
麻生太郎首相がようやく「週明け衆院解散、八月三十日総選挙」を決断し、本来なら結束して選挙へ本腰を入れるはずである。にもかかわらず、内紛めいたことを繰り返していては、勝利の女神にも見放されよう。
古賀誠選挙対策委員長は十四日の総務会で、都議選結果について「責任は私にある。辞めさせていただきたい」と、席を立った。
うるさ型がそろうメンバーから執行部責任を激しく追及されたことに“プッツン”してしまったのだろうか。東国原英夫宮崎県知事への総選挙出馬要請が有権者の想定外の反感を買ったことで、直接要請を重ねた古賀氏への党内外の風当たりは強まる一方だった。
政権をかけた決戦を前に司令官が職を放り出すのは前代未聞だ。細田博之幹事長は慰留するとしているが、事態は深刻である。古賀氏に続き、尾辻秀久参院議員会長も「私も首を差し出す」と退席した。尾辻氏は首相退陣を求めていただけに、解散予告への抗議の意味合いもありそうだ。
執行部すら動揺している状況では、反麻生勢力が黙っているわけはない。中川秀直元幹事長は党代議士会で、首相を前に「解散のあり方に異論がある。自民の人心一新が必要だ」とかみついた。
中堅・若手議員らは都議選の総括が必要だと、両院議員総会の開催を迫っている。「だれも麻生首相のもとでは戦いたくない」と、一気に「麻生降ろし」を狙うつもりらしい。一方で自民公認で戦いながら、自民とは違う独自マニフェストを掲げる動きもある。
自らの生き残りに固執し各自が勝手に動く。これは分裂選挙に突入する兆しなのか。もはや政権の体をなしていないと、けなされても仕方ない。
見苦しいまでの大人げない騒動に有権者はあきれ返っていることを自覚しておいた方がいい。
野党が衆院に提出した内閣不信任案には自民所属議員はさすがにそろって否決した。麻生内閣を信任するとの意思表示だろう。なのに内から政権を瓦解させるような動きに出るのは筋が通らない。
なすべきは歴史的決戦へ堂々たる陣立てを整えることである。
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