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天声人語

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2009年7月15日(水)付

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 干からびたアジサイが、けだるく陽光の下にある。東京の梅雨明けを昼ニュースで知った。明けたから暑いのか、暑いから明けるのか。いずれにしても、停滞前線の弧はちぎれ、真夏のカレンダーが動き出す▼きょうの早暁、福岡市は博多祇園山笠のクライマックス「追い山」にわく。豪壮な山車(だし)を担ぎ、5キロの街路を駆け抜けるチームプレー。沿道からの勢(きお)い水がアスファルトを黒くぬらし、夏も本番である。〈山笠(やま)舁(か)けば男の匂(にお)ひ少年に〉石田哲朗▼博多に住んだのはもう二十数年前だが、大太鼓の連打の中、櫛田(くしだ)神社を走り出る山笠の迫力は耳目を離れない。水法被(みずはっぴ)に締め込みの「のぼせもん」たちは、同性の目からもぞくっとする色気を放っていた。夏の祭りは体で感じるものらしい▼まったくの私見だが、この時期の思い出は冬のそれより鮮明に、べったりと残る気がする。独断を重ねれば、夏の出来事はそのまま五感にやきつけ、冬のは日記にとどめるのがふさわしい▼振り返ると、気力充実の年は「行動の夏」が待ち遠しく、逆の年は「思索の冬」が恋しかったようにも思う。同様に、浮かれた日は青空がうれしく、沈んだ日は優しい雨に癒やされたい。時候と心持ちの関係はなんとも奥深い▼気象庁によると、しばらくは曇りや雨の日もあるが、8月にかけて晴れの日が増えるという。局地予報では、東京の永田町かいわいが暑苦しくなりそうだ。行動の人も思索の人も、国民すべての明日にかかわる「祭り」を終幕に据えて、五感どころか歴史に残る夏が始まった。

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