麻生首相がようやく「8・30総選挙」を決めた。都議選惨敗直後の衆院解散方針を与党にはねつけられての妥協の産物ともいえる。首相決断が肝心な場面でも軽んじられた。決戦へ不安はないか。
東京都議選で自民党が歴史的惨敗を喫した直後から、与党内では総選挙日程をめぐる綱引きが表面化した。
「麻生降ろし」を警戒して「十四日解散、八月上旬投票」を模索する麻生太郎首相と、早期解散に「待った」を掛ける自民、公明両党幹部の間で。
「今解散したら自民は百議席を切る」−。「やけくそ解散」への自民側の拒否反応はすさまじく、結局は週明け解散、八月三十日投票で折り合った。公明が希望していた日取りだ。与党側からすれば首相に解散させてやるから日程はこちらの言うことを聞いてもらいますよ、という話である。
解散日を「予告」しておけば、反麻生勢力による総裁選前倒しの動きを封じ込めることができるとの計算も働いているようだ。
それにしても、九月の任期切れ直前の八月三十日選挙は、事実上の任期満了選挙だ。
「解散は自ら決断する」と繰り返してきたのに、与党の意向に配慮せざるを得なかったのは、首相の置かれた立場を象徴していよう。自民役員人事の断念もつい最近のことだ。政権のエネルギー枯渇がいよいよ深刻化している。
私たちは昨秋の政権発足来、首相のもとでの早期解散を求めてきた。やっと「政権選択」決戦を迎えるのは結構なことだが、踏み切れずに来た代償も小さくない。
自民内では、なお麻生降ろしを探る向きもあるという。自分たちが総裁に選んだ責任も省みず、党の「表紙替え」にすがるのは論外だ。あらためてくぎを刺しておく。選挙戦で反麻生の旗を掲げるなら、有権者の目を欺くものだ。
民主、共産、社民、国民新の野党四党は十三日、衆院に内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出した。多数を握る参院で可決されれば、野党議員は審議をボイコット、全国各地で一斉に選挙運動に入りそうだ。
貨物検査法案などを抱える与党は国会審議もそこそこに、選挙区に散ることだろう。その間、国会は解散まで空転状態。決戦前に何とも間延び感が否めない。
ともかく「号砲」は鳴った。各党はマニフェスト(政権公約)の中身を詰めて、歴史的決戦に備えてもらいたい。
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